第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第1章 環境への負荷の少ない循環型の社会づくり

第1節 大気環境の保全

2 大気環境保全対策

(1) 自動車排出ガス対策の推進
ア 自動車排出ガス対策
(ア) 自動車排出ガス対策

自動車排出ガス対策は、国においてディーゼル車の排出ガス対策を中心に「大気汚染防止法」や「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx・PM法)」により、逐次規制の強化が図られている。

県では、自動車排出ガスによる影響を把握するため、11局(うち2局は宇都宮市設置)の自動車排出ガス測定局で、大気汚染の常時監視を行っている。

なお、これまで県においては自動車排出ガス測定局を計画的に増設しており、宇都宮市においても17年度に1局増設している。また、窒素酸化物浮遊粒子状物質の測定を全自動車排出ガス測定局で行う等監視体制の充実強化を図っている。

さらに、「アイドリングストップ運動」(駐停車中の自動車の不必要なエンジン使用の中止)の普及を図るため、「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に努力規定を設け、ラジオスポットやポスター等による県民への啓発活動の展開、運輸関係業界や大規模駐車場の設置者への呼び掛けを行っている。

(イ) ディーゼル自動車粒子状物質減少装置装着の促進

埼玉県、東京都、千葉県及び神奈川県の一都三県において、各都県の条例に基づき、15年10月から、排出基準を満たさないディーゼル自動車の通行が禁止されている。

本県では、当該地域を通行する大型ディーゼル自動車にDPF等の粒子状物質減少装置の装着を促進するため、14年度から制度融資の環境保全資金の融資対象にDPF等の粒子状物質減少装置を加えた。また、15、16年度の2ヶ年間、2,436台の大型ディーゼル自動車に粒子状物質減少装置の装着費用の一部を補助し、粒子状物質減少を促進し、大気環境の保全を図っている。

(ウ) 低公害車の普及促進

電気自動車、天然ガス自動車等の低公害車の導入は、自動車走行に起因する大気汚染(NOX、黒煙等)や騒音の改善、二酸化炭素(CO)削減等に対し、極めて有効である。県では、県民への啓発活動を行うとともに、奥日光で電気バスやハイブリッドバスを運行している。また、公用車に天然ガス車やハイブリッド自動車を導入していくこととしており、17年度は、ハイブリッド自動車9台を導入した。

イ 自動車交通対策

体系的な道路ネットワークの整備や道路の拡幅、バイパスの整備、交差点の立体化等を推進し、交通渋滞の解消、緩和による大気汚染物質の排出抑制を行っている。

 
ウ 公共交通機関の利用促進
(ア) 公共交通機関への転換

普段、通勤等で自家用車を利用している者に対し、公共交通機関の利用促進を図るため、毎月1日と15日をバス・鉄道利用デーと定め、ラジオスポットによる呼びかけを行っている。

(イ) 新交通システムの導入検討

宇都宮地域において導入を検討しているLRT(ライトレールトランジット)は、中心市街地の活性化などに加え、自動車排出ガスの排出量の削減など環境負荷の軽減に効果があり、17年度に宇都宮市と共同で設置した「新交通システム導入課題検討委員会」において、その導入に当たっての課題の検討を行っている。

(ウ)公共交通の利便性の向上

バスや鉄道といった県内公共交通の中心に位置し、交通渋滞なども著しい県央地域において、公共交通の利便性の向上と自動車利用から公共交通への転換を図るなど広く公共交通の利活用を促進するため、17年度に県央3市4町とともに「県央地域公共交通利活用促進協議会」を設立し、利用促進等の検討を行っている。また、本県全体の交通体系の現状を見ると、自家用車に依存する傾向がますます強まる一方で、公共交通の利用者の減少に歯止めがかからない状況にあるため、18年度には「とちぎ公共交通確保対策協議会」を設置し、全県的な視点で公共交通の利便性の向上及び利用促進策などを検討することとしている。

(2) 広域大気汚染対策の推進
光化学スモッグ

光化学スモッグは、窒素酸化物炭化水素などが紫外線の作用を受けて生成する刺激性ガス(光化学オキシダント)により起こるもので、目の刺激、のどの痛み、胸苦しさなどの健康被害を伴う。

県では、被害を未然に防止するため、「栃木県光化学スモッグ対策要綱」を策定し、光化学スモッグ予報を、関係する市町村、行政機関、報道機関及び緊急時協力工場等に通報している。

また、緊急時には、注意報等を発令し、市町村への通報、とちぎの青空ホームページ等による県民への情報提供、緊急時協力工場等に対するばい煙排出量の削減措置の要請を行い、被害の未然防止に努めている。

光化学スモッグの発生予報業務は、大気環境情報システムにより収集した光化学オキシダント濃度等と気象に関する専門機関から提供される発生予測気象情報及び環境省の大気汚染物質広域監視システムから得られる関東地区の広域的な情報を把握し、総合的に解析することで行っている。

表2−1−4 光化学スモッグ発令対象地域
番号 対象地域 市町数 市町名
県中央部 2市3町 宇都宮市、鹿沼市、河内町、芳賀町、高根沢町
県南部 3市8町 栃木市、小山市、下野市、上三川町、西方町、壬生町、 野木町、大平町、藤岡町、岩舟町、都賀町 
県南西部 2市 足利市、佐野市
県南東部 1市2町 真岡市、二宮町、益子町
県北東部 3市3町 矢板市、那須塩原市、さくら市、上河内町、塩谷町、 那須町
県北西部 1市 日光市
県東部 2市3町 大田原市、那須烏山市、茂木町、市貝町、那珂川町
表2−1−5 光化学スモッグ緊急時の発令及び解除の基準
区 分 発令の基準 解除の基準
予 報 気象条件及びオキシダント測定値等を検 討し、下のいずれかの状態が発生すると 予測されるとき。  
注意報 一の測定地点において、オキシダント測 定値が0.12ppm以上になり、かつ、この状 態が気象条件からみて継続すると認めら れるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシ ダント測定値が0.12ppm未満になり、かつ、 気象条件からみてその状態が悪化するお それがなくなったと認められるとき又は 日没になったとき。
警 報 一の測定地点において、オキシダント測 定値が0.24ppm以上になり、かつ、この状 態が気象条件からみて継続すると認めら れるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシ ダント測定値が0.24ppm未満になり、かつ、 気象条件からみてその状態が悪化するお それがなくなったと認められるとき。
重大緊急報 一の測定地点において、オキシダント測 定値が0.40ppm以上になり、かつ、この状 態が気象条件からみて継続すると認めら れるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシ ダント測定値が0.40ppm未満になり、かつ、 気象条件からみてその状態が悪化するお それがなくなったと認められるとき。
  
イ 酸性雨

本県では、ろ過式採取装置により酸性降下物量の調査を4地点で、また、酸性雨自動測定装置によりpH、EC(電気伝導度)の常時監視を3地点で実施している。

また、酸性雨は広域的な汚染でもあることから、中長期的な影響の把握のための「酸性雨長期モニタリング」(国からの委託事業)や、関係都県との共同調査(関東地方環境対策推進本部の酸性雨共同調査)に積極的に参加するなど、調査・研究等を継続して実施している。

ウ スターウォッチング・ネットワーク

一人ひとりが身近な大気の状況を把握し、大気保全の重要性や自然観察についての興味と関心を深めることを目的として、昭和62年度から環境省の主催で実施されている。

17年度は、肉眼による「天の川」の観察、双眼鏡による夏期及び冬期の代表的な星座である「こと座」及び「すばる星団(プレアデス星団)」が、どの等級の星まで見えるかの観察等がなされ、本県では、5市1町の17団体延べ236名が参加した。

(3) 有害大気汚染物質対策の推進
ア モニタリング調査

健康リスクが高いと考えられ、優先的に対策に取り組むべきとされている有害大気汚染物質(22物質)のうち、測定方法の確立されている19物質について、「大気汚染防止法」第18条の23の規定に基づき、一般環境3地点、固定発生源周辺(工業団地周辺)3地点、沿道1地点の合計7地点で、月1回24時間の採取によるモニタリング調査を実施している。

アスベスト対策

アスベスト使用建築材の解体の増加等に伴い、大気環境中へ排出されるアスベストの増加が懸念されることから、17年度から一般環境3地点、沿道1地点の合計4地点で3日間の採取によりモニタリング調査を実施している。

また、17年度末に創設された、アスベスト改修型優良建築物等整備事業(国庫補助事業)の活用により、建築物に吹き付けられたアスベストの除去等を進めている。

アスベスト含有率が1%を超える県有施設について、「吹付けアスベスト使用施設における対応方針」に基づき、計画的に除去等を推進している。

(4) 工場・事業場対策の推進

大気環境の保全を図るため、「大気汚染防止法」及び「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に基づく工場・事業場への立入検査を実施している。

また、「工場・事業場ばい煙指定物質等自主管理要領」に基づき、ばい煙量等の自主測定及び結果の報告を求めるなどにより、施設の適切な維持管理を図るよう指導している。

規制基準

本県では、「大気汚染防止法」に基づく一律排出基準に加えて、同法第4条第1項の規定に基づき、有害物質(塩素、塩化水素ふっ素、ふっ化水素及びふっ化けい素)について、より厳しい上乗せ排出基準を定めている。

また、「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、4種類のばい煙に係る特定施設を定め、排出基準を設定している。粉じんについては、3種類の特定施設を定め、施設の管理基準を規定している。

イ ばい煙関係施設及び粉じん関係施設の届出状況

法及び条例に基づくばい煙及び粉じん関係施設の届出状況は、表2−1−6、表2−1−7のとおりとなっている。

表2−1−6 ばい煙関係施設等届出状況(18年3月31日現在)

[1] 大気汚染防止法
ばい煙発生施設 施設数(件)
県分 宇都宮市分
ボイラー 2,820 674 3,494
溶解炉 225 16 241
金属加熱炉 203 34 237
焼成炉及び溶融炉 30 1 31
乾燥炉 147 22 169
廃棄物焼却炉 115 19 134
その他の産業炉 173 18 191
施設合計 3,713 784 4,497
届出工場・事業場数 1,465 286 1,751
[2] 栃木県生活環境の保全等に関する条例
ばい煙に係る
特定施設   
施設数(件)
県 分 宇都宮市分
亜鉛又はアルミニウム
の第二次精錬の用
に供する溶解炉
36 0 36
金属製品の製造の用
に供する表面処理
施設及び酸洗施設
3 0 3
そ  の  他 1 0 1
施設合計 40 0 40
届出工場・事業場数 17 0 17

表2−1−7 粉じん関係施設等届出状況(18年3月31日現在)

[1] 大気汚染防止法(一般粉じん)
一般粉じん
発生施設
施設数(件)
県 分 宇都宮市分
コークス炉 2 0 2
堆積場 230 13 243
コンベア  743 14 757
破砕機・摩砕機 335 7 342
ふるい 137 0 137
施設合計 1,447 34 1,481
届出工場・事業場数 227 12 239
[2] 大気汚染防止法(特定粉じん排出等作業件数)
年 度 作業件数
県 分 宇都宮市分
14 12 1 13
15 6 7 13
16 9 5 14
17 95 28 123
[3] 栃木県生活環境の保全等に関する条例
粉じんに係る特定施設 施設数(件)
県 分 宇都宮市分 合 計
飼料又は有機肥料の用に供する粉砕施設及びふるい 38 0 38
窯業土石又は鉱物の用に供する施設 218 18 236
活性炭又は炭素製品の用に供する施設 14 1 15
施設合計 270 19 289
届出工場・事業場数 101 11 112
ウ 立入検査状況

17年度は、延べ326工場等について立入調査を実施した。(表2−1−8)

立入検査した工場等のうち、96工場等に是正指導し、その主な内容は、届出の不備62件(54.9%)、施設等の点検・管理16件(14.2%)、自主分析の実施13件(11.5%)であった。(表2−1−9)

表2−1−8 立入検査実施数
区 分 13 14 15 16 17
ばい煙関係の施設を設置する工場・事業場 270 318 320 333 307
粉じん関係の施設を設置する工場・事業場 12 14 11 13 19
合 計 282 332 331 346 326

(注) 1 ばい煙関係の立入検査実施数は、県分263件、宇都宮市委任分44件
2 粉じん関係の立入検査実施数は、県分16件、宇都宮市委任分3件

表2−1−9 立入検査指導内容
指導事項 工場・事業場数(件)
県実施分 宇都宮市実施分 合  計
是正指導した工場・事業場数 71(61) 25(19) 96 (80)
指導の内容 排出基準・管理基準の遵守 1( 1) 3( 0) 4 ( 1)
自主分析の実施 10( 6) 3( 6) 13 (12)
届出の不備 40(40) 22( 8) 62 (48)
施設等の点検・管理 16( 3) 0( 0) 16 ( 3)
処理施設等の設置・改善 5( 1) 0( 0) 5 ( 1)
管理組織体制 2( 5) 1( 6) 3 (11)
記録の整備 0( 2) 0( 0) 0 ( 2)
その他 10(13) 0( 0) 10 (13)

(注) ( )内数値は、16年度実績値

アスベスト対策

元年12月に「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が施行され、アスベストが「特定粉じん」として規制を受けたことに伴い、関係企業の監視・指導に努めている。

また、9年4月に吹付け石綿が使用されている建物の解体等作業が「特定粉じん排出等作業」として規定されたことに伴い、この解体作業についても規制・指導を実施している。

さらに、18年3月に大気汚染防止法施行令が改正されたことに伴い、従来は規制の対象外であった「石綿を含有する保温材、断熱材及び耐火被覆材」を使用した建築物の解体等作業についても規制・指導を実施している。

オ 佐野市葛生地区における粉じん対策

佐野市葛生地区は、日本有数の石灰鉱山等の密集地域であり、特に沿道の粉じん量が多いため、降下ばいじんのモニタリング調査を年間を通じ3地点で実施するとともに、発生源対策を実施している。

(5) スパイクタイヤ装着に伴う道路粉じん対策

「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」に基づき、3年5月に宇都宮市以北の17市町がスパイクタイヤ使用禁止地域として指定され、5年2月に日光市が追加指定された。

17年度末現在、市町村合併により、13市町が指定されている。(表2−1−10)

表2−1−10 スパイクタイヤ使用禁止地域
7市 宇都宮市、鹿沼市、日光市、大田原市、矢板市、那須塩原市、さくら市
6町 上河内町、河内町、芳賀町、塩谷町、高根沢町、那須町
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