第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第1章 環境への負荷の少ない循環型の社会づくり

第3節 土壌環境・地盤環境の保全

1 土壌環境・地盤環境の状況

(1)土壌環境の状況

環境基準

土壌の汚染に係る環境基準は、「環境基本法」により、土壌が有する「水質を浄化し地下水をかん養する機能」及び「食料を生産する機能」の観点から、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準としてカドミウム等27項目が定められている。また、12年1月に施行された「ダイオキシン類対策特別措置法」により、ダイオキシン類について環境基準が定められている。
 また、15年2月施行の「土壌汚染対策法」により、人の健康を保護するため、汚染土壌の除去等の措置が必要とされる基準としてカドミウム等26項目が定められた。
 なお、環境省では、17年6月に「土壌環境モニタリングプラン」を策定し、自然汚染に関する調査・解析等を行っている。
 農用地の土壌汚染については、農用地の土壌環境を保全する観点から、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」により、カドミウム及びひ素特定有害物質について基準が定められているほか、土壌中の重金属等の蓄積による作物の生育への影響を防止するため、農用地表層土壌を対象にした亜鉛を指標とする管理基準値が定められている。

イ 土壌環境の現況
(ア)市街地等
 県内農用地を除く土壌環境の状況を把握するため、本県では11年度から14年度にかけて土壌環境保全実態調査を実施した。その結果、調査項目(カドミウム、六価クロムひ素、総水銀(アルキル水銀)、セレン)はすべて基準値以内であり、土壌汚染は見られなかった。
(イ)農用地
 県内農用地の土壌環境の状況を把握するため、11年度から14年度にかけて県内を4ブロックに分け、「土壌機能モニタリング調査」を実施した。
 その結果、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」で定められている特定有害物質(及びひ素)は基準値以内であり、土壌汚染は見られなかった。

(2) 地盤環境の状況

ア 地盤沈下の経緯

関東平野における地盤沈下は、かつて、関東南部地域において著しい状況にあった。近年、南部地域は沈静化したものの、関東北部地域において、地盤沈下が進行している状況にある。
 本県においては、昭和50年に国が精密水準測量を実施した結果、野木町及び小山市の一部の水準点が最大で約15cm(昭和42年9月から昭和50年1月までの7年4か月間)沈下していることが初めて確認された。
 県では昭和51年度から精密水準測量を、昭和53年度から地盤沈下計による観測を開始している。
 その後、測量対象地域を拡大するとともに、地下水位と地盤変動を観測するための地盤沈下観測所の拡充に努めてきた。
 19年度においては、精密水準測量を県央以南平地部14市町に設置してある水準188点、路線延長476kmについて実施した。(宇都宮市、足利市、栃木市、佐野市、小山市、真岡市、上三川町、壬生町、南河内町〔現下野市〕、二宮町、石橋町〔現下野市〕、国分寺町〔現下野市〕、大平町、岩舟町)また、地盤沈下観測を県央以南平野部9市町に設置してある17観測所においてそれぞれ実施した。
 なお、野木町丸林においては、8年度の地盤沈下量が全国1位となる6.98cmを記録したものの、近年は比較的安定傾向を示している。

イ 地盤沈下の現況

県南地域の平地部は、沖積層や洪積層が厚く、地下水を過剰に揚水すると地盤沈下が起こりやすい地質となっている。
 19年度は、野木町や小山市などで沈下傾向が見られたものの、観測を行なった地域内で2cm以上の沈下が観測された地点はなかった。(表2−1−34、表2−1−35)
 なお、19年度の最大年間沈下量は宇都宮市宿郷三丁目の1.97cmであった。
 年間の状況を見ると、県南地域の多くの観測井では地下水位は夏季に低下し、秋季から冬季にかけて回復する傾向にある。また、地盤は一般的に夏季の水位低下に伴い収縮するが、水位が回復しても、完全には回復しない傾向が見られる。
 沈下量及び年間2cm以上沈下している地域の面積等を経年的に見ると、降水量との関連がみられ、渇水であった年(2年、4年、6年、8年)には、沈下量及び沈下面積ともに大きくなっている。(表2−1−36、図2−1−31)

表2−1−34 県南地域代表市町の最大年間沈下地点とその沈下量 (19.1.1〜20.1.1) (単位:cm)
市町名 水準点所在地 沈下量
小山市 小山市乙女934     (新井建業向側) 0.77
野木町 野木町丸林571     (野木町役場) 1.36
藤岡町 藤岡町下宮637−3  (下宮神社) 0.86
足利市 足利市小曽根517   (筑波小学校) −0.80
佐野市 佐野市高山町131   (界排水機場) 0.47
(注) 県南地域代表市町は、「関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱(3年、閣議決定)」に定める県内の対象地域のうち、市町別累積沈下量についての上位5市町を示した。
  佐野市内で11年度まで最大累積沈下量(14.81cm)を記録していた高山町131の水準点は、周辺工事により設置し直したため、船津川町のデータを示した。

表2−1−35 県南地域代表市町の最大累積沈下地点とその沈下量 (昭52.1.1〜20.1.1)  (単位:cm)
市町名 水準点所在地 沈下量
小山市 小山市乙女934     (新井建業向側) 53.66
野木町 野木町潤島800−1   (野木中学校) 77.88
藤岡町 藤岡町下宮637−3   (下宮神社) 65.66
足利市 足利市県町1371    (県町公民館) 30.30
佐野市 佐野市船津川町     (椿田稲荷) 15.86
(注) 佐野市内で11年度まで最大累積沈下量(14.81cm)を記録していた高山町131の水準点は、周辺工事により設置し直したため、船津川町のデータを示した。

表2−1−36 地盤沈下した地域の面積の推移 (単位:km2
52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63
2cm以上沈下地域 1 53 1 17 1 4 93 9 7 29 13 6 55 35 100
4cm以上沈下地域 1 18 1 10 16
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19  
2cm以上沈下地域 1 76 1 50 0.1  
4cm以上沈下地域 24 18  

図2−1−31 県南地域代表市町の最大累積沈下水準点の沈下量の推移


図2−1−32 栃木県地盤変動等量線図

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2 土壌環境・地盤環境保全対策

(1) 土壌汚染対策の推進

ア 土壌汚染対策

15年2月施行の「土壌汚染対策法」に基づき、工場・事業場等における特定有害物質(カドミウム等25物質)による土壌汚染の対策を推進している。
 19年3月には同法に基づく区域指定(ふっ素及びその化合物、真岡市地内)を初めて行い、汚染の除去が確認されたことから同年4月に指定を解除した。さらに、20年2月には2件目の区域指定(ほう素及びその化合、下都賀郡藤岡町地内)を行い、汚染への対応について指導している。
 また、「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に基づき、特定有害物質を取り扱う特定事業場に対して土壌汚染未然防止のための施設の構造や管理の基準の遵守について指導を行っている。

イ 土砂等適正処理事業

11年4月施行の「土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例」に基づき、県内における土砂等の埋立ての適正処理を推進している。


(2) 地盤沈下防止対策の推進

ア 経過

昭和62年3月、栃木県公害対策審議会から「地盤沈下の基本的施策について」答申が出された。これを受けて、2年12月に県南県央地域の16市町を対象とした「栃木県地下水採取の届出に関する指導要領」を策定した。
 5年7月には「栃木県地下水揚水施設に係る指導等に関する要綱」を策定し、対象地域を県内全域に広げるとともに、一定規模以上の施設について事前協議制を導入した。その後、同要綱は8年7月及び19年3月等に一部が改正され、現在に至っている。
 一方、国は地盤沈下防止の総合的な対策を講じるため、3年に県南部地域(13市町)を含む関東平野北部を対象にした「関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱」を策定した。
 同要綱においては、本県の対象地域は、次のように区分されている。

(ア)保全地域(地下水採取に係る目標量を設定し、その達成のための措置を講じる地域)
 小山市の一部、野木町、藤岡町
(イ)観測地域(観測及び調査等に関する措置を講じる地域)
 足利市、佐野市(旧佐野市)、小山市の一部、真岡市、上三川町、南河内町(現下野市)、二宮町、石橋町(現下野市)、国分寺町(現下野市)、大平町、岩舟町
 地盤沈下対策は多岐にわたることから、9年度に庁内関係各課室で構成する「地盤沈下対策検討会」を設置し、地下水利用者への地下水保全意識の啓発、観測体制の充実など連携を図りながら地盤沈下対策の推進に努めている。
 国土交通省は、17年3月に「地盤沈下防止等対策要綱に関する関係府省連絡会議」を設置し、地盤沈下の状況やこれまでの地盤沈下防止の取組等について検討を行った結果、今後とも「関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱」の取組を継続し、地盤沈下防止等の総合的な対策を推進することとした。
イ 地盤沈下防止対策の推進
(ア)テレメータシステムによる観測
 地盤沈下が懸念される小山市・野木町・藤岡町において、迅速な対策を図るため、地下水位及び地盤沈下の状況をテレメータシステムによりリアルタイムで観測している。
 テレメータを設置している観測所は、小山大谷、野木、藤岡遊水池、野木原、小山若木の5か所で、このうち、小山大谷、野木及び藤岡遊水池の観測所において観測した地下水位が対策水位(点検水位・節水水位)を超えた場合、「小山市・野木町・藤岡町地盤沈下防止連絡協議会(11年3月設立) 」の地下水利用者に対し、点検要請・節水要請を行っている。(図2−1−33)
 19年度は、8月から9月にかけて小山市と野木町で点検水位を超えた地下水位の低下が観測されたため、小山市と野木町において点検要請を行った。

図2−1−33 地盤沈下の情報提供のフロー(概要)


(イ)「栃木県地下水揚水施設に係る指導等に関する要綱」による指導
 県民の生活水準の向上や産業の進展に大きく貢献している貴重な水資源である地下水を、将来にわたり有効かつ適切に保全、利用するため、「栃木県地下水揚水施設に係る指導等に関する要綱」に基づき、県内全域を3地域に区分し、揚水機の規模に応じて届出させ、地下水の採取量、揚水機の規模など、適正な施設となるよう指導している。
 特に、同要綱のA地域においては、大規模地下水採取者に対して、事前協議制度により、節水や代替水源への転換等の指導を行っている。