第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策
第1章 環境への負荷の少ない循環型の社会づくり
第4節 | 騒音・振動・悪臭の防止 |
1 騒音・振動・悪臭の状況
(1)騒音の状況
ア 環境基準
騒音に係る環境基準は、地域の類型及び時間の区分ごとに定められており、道路交通騒音が支配的な音源である地域(A及びB類型については2車線以上の車線を有する道路に面する地域、C類型については車線を有する道路に面する地域)については「道路に面する地域」の環境基準として、「一般地域(道路に面する地域以外の地域)」の環境基準とは別個に定められている。更に、「道路に面する地域」のうち「幹線交通を担う道路に近接する空間」については、特例として基準値が別途定められている。類型指定は、「都市計画法」に基づく用途地域の区分に準拠して、工業専用地域を除く県内全域をA・B・C類型のいずれかにあてはめている。なお、特に静穏を要する地域であるAA類型を指定した地域は県内にはない。(表2−1−37)
なお、環境基準の達成状況は、一般地域(道路に面する地域以外の地域)については、原則として一定の地域ごとに当該地域の騒音を代表すると思われる地点を選定して評価し、道路に面する地域については、原則として一定の地域ごとに当該地域内のすべての住居等のうち環境基準値を超過する戸数及び超過する割合を把握することにより評価することとされている。
新幹線鉄道騒音に係る環境基準は、東北新幹線沿線市町の一部地域について類型指定を行っている。航空機騒音に係る環境基準の類型指定は行っていない。(表2−1−38、表2−1−39)
地域の類型 | 地域の区分 | 基準値 | 該当地域(都市計画法に定める用途地域) | |
昼間 6:00〜22:00 |
夜間 22:00〜6:00 |
|||
A | 一般地域 | 55デシベル以下 | 45デシベル以下 | 第1種低層、第2種低層、第1種中高層及び第2種中高層の各住居専用地域 |
道路に面する地域 | 60デシベル以下 | 55デシベル以下 | ||
B | 一般地域 | 55デシベル以下 | 45デシベル以下 | 第1種及び第2種住居地域、準住居地域、及び足利市等4市の一部地域 |
道路に面する地域 | 65デシベル以下 | 60デシベル以下 | ||
C | 一般地域 | 60デシベル以下 | 50デシベル以下 | 近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域及び用途地域の定めない地域 |
道路に面する地域 | 65デシベル以下 | 60デシベル以下 | ||
道路に面する地域のうち、幹線交通を担う道路に近接する空間(※) | 70デシベル以下 | 65デシベル以下 | ※道路端からの距離 2車線以下の道路:15m以内 2車線以上の道路:20m以内 |
(注) | 幹線交通を担う道路とは、高速自動車国道、自動車専用道路、一般国道、県道及び4車線以上の市町村道。 工業専用地域には、類型を当てはめていない。 |
地域の類型 | 基準値 | 指定地域 | |
(都市計画法に定める用途地域) | 区域 | ||
I | 70デシベル以下 | 第1種低層住居専用地域、 第2種低層住居専用地域、 第1種中高層住居専用地域、 第2種中高層住居専用地域、 第1種住居地域、 第2種住居地域、 準住居地域、 用途地域の定めのない地域 |
軌道中心線から300m以内の区域 ※工業専用地域、河川の地域、トンネル出入口から中央部方向へ150m以上の区域等は除外 |
II | 75デシベル以下 | 近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域 |
地域の類型 | 基準値(WECPNL) | 基準値 (時間帯補正等価騒音レベル) |
---|---|---|
I | 70以下 | 57デシベル以下 |
II | 75以下 | 62デシベル以下 |
(注) | 19年12月17日の改正により、時間帯補正等価騒音レベルによる環境基準は25年4月1日から適用される。 |
イ 環境基準の達成状況
- (ア)一般地域(道路に面する地域以外の地域)
- 19年度は、10市1町(宇都宮市を含む。)が一般地域(道路に面する地域以外の地域)の県内40地点について測定したところ、昼夜ともに環境基準を達成したのは33地点(82.5%)であった。(表2−1−40)
地域 | 類型 | 調査地点数 | いずれの時間区分でも 達成した地点数(割合) |
時間区分毎の達成地点数(割合) | |
昼間(6:00〜22:00) | 夜間(22:00〜6:00) | ||||
一般地域 | A | 12 | 10(83.3%) | 12(100.0%) | 10(83.3%) |
B | 15 | 11(73.3%) | 11(73.3%) | 11(73.3%) | |
C | 13 | 12(92.3%) | 12(92.3%) | 12(92.3%) | |
計 | 40 | 33(82.5%) | 35(87.5%) | 33(82.5%) |
- (イ)道路に面する地域
- 道路に面する地域の環境基準達成状況は、12年4月から地域内のすべての住居等のうち基準値を超過する戸数及びその割合を把握する、いわゆる「面的評価」により評価している。19年度は、「騒音規制法」第18条に基づく自動車騒音の常時監視を、県が宇都宮市を除く県内の207区間、道路延長693.7kmについて、宇都宮市が市内の125区間、道路延長365.9kmについて実施したところ、環境基準の達成率は88.2%であった。(表2−1−41)
なお、11年以前との比較を行うため、19年度に県及び11市1町(宇都宮市を含む。)が実施した道路沿道における測定結果を参考として示す。(表2−1−42)
|
||||||||||||||||||||||||||
(注)( )は、県実施分の内数 |
類型 | 調査地点数 | いずれの時間区分でも 達成した地点数(割合) |
時間区分毎の達成地点数(割合) | |
昼間(6:00〜22:00) | 夜間(22:00〜6:00) | |||
A | 4 | 4(100.0%) | 4(100.0%) | 4(100.0%) |
B | 28 | 16(57.1%) | 19(67.9%) | 16(57.1%) |
C | 48 | 29(60.4%) | 33(68.8%) | 30(62.5%) |
計 | 82 | 51(62.2%) | 58(70.7%) | 52(63.4%) |
(注)達成した地点数(割合)とは、環境基準値以下の地点数及び割合である。
- (ウ)新幹線鉄道騒音
- 新幹線鉄道騒音については、県及び沿線市町が、軌道中心から25mの地点で調査を行っている。19年度は、16地点で調査したところ、その結果は72〜78デシベルの範囲であり、環境基準を達成していた地点はなかった。
なお、東日本旅客鉄道(株)において、当面の対策としてピーク騒音レベルを75デシベル以下とする対策(いわゆる「75デシベル対策」)を講じているところであるが、測定地点16地点のうち2地点(12.5%)で75デシベルを超過していた。 - (エ)航空機騒音
- 19年度は、宇都宮市が陸上自衛隊航空学校宇都宮校周辺の11地点で航空機騒音の状況を把握するための調査をしたところ、60.0〜71.1 WECPNLの範囲であった。
(2)振動の状況
ア 環境上の振動の限度等
- (ア)道路交通振動
- 道路交通振動の限度は、「振動規制法」に基づき区域及び時間の区分ごとに定められており、これを超えた場合で道路の周辺の生活環境が著しく損なわれるときは、道路管理者に対し、道路交通振動の防止のための舗装等の措置をとるべきこと、または県公安委員会に対し、道路交通法の規定に基づく交通規制等の措置をとるべきことを要請することになっている。
- (イ)新幹線鉄道対策に係る指針
- 新幹線鉄道の列車走行時に発生する振動については、「環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策について(勧告)」に基づき、振動レベルが70デシベルを超える地域について、防止対策を講ずることになっている。
イ 振動の現況
- (ア)道路交通振動
- 19年度は、5市が国道・県道等沿道の県内12地点で測定したところ、「振動規制法」に基づく道路交通振動の要請限度を超える地点はなかった。
- (イ)新幹線鉄道振動
- 19年度は、県及び沿線市町が軌道中心から25mの8地点で調査したところ、その結果は56〜65デシベルの範囲であり、指針値70デシベルを超える地点はみられなかった。
(3) 悪臭の状況
悪臭は、人の感覚や生活環境に左右されるいわゆる感覚公害である。市街地の拡大による住居と工場等の接近化、生活水準の向上とともに高まっている生活環境の質的向上に対する欲求等により、これまで容認されてきたにおいが悪臭と感じられるようになってきている。
19年度において、県及び市町が受け付けた悪臭苦情は246件(18年度205件)であり、公害苦情全体の15.0%(18年度11.9%)を占めている。
2 騒音・振動・悪臭防止対策
(1) 工場等騒音・振動対策の推進
ア 騒音防止対策
- (ア) 「騒音規制法」に基づく規制
- 「騒音規制法」では、特定施設を設置する工場・事業場及び特定建設作業から発生する騒音について、地域を指定して規制を行っている。地域の指定は知事が行うことになっており、「都市計画法」に基づく用途地域の区分に準拠して、全市町で指定を行っている(20年3月末現在)。なお、中核市である宇都宮市においては、宇都宮市長が指定を行っている。
- (イ) 「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に基づく規制
- 「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、「騒音規制法」で規制されている地域以外における工場・事業場及び特定建設作業から発生する騒音について規制を行っている。このため、法と条例により県内全域が規制の対象となっている。
- (ウ)工場・事業場対策の推進
- 騒音に係る規制の事務は、市町村長の事務として、実態に即したきめ細かな指導が行われ、騒音公害の未然防止を図っている。
中小企業者等には、騒音防止施設の設置・改善のために融資制度による支援を行っている。
イ 振動防止対策
- (ア) 「振動規制法」に基づく規制
- 「振動規制法」では、特定施設を設置する工場・事業場及び特定建設作業から発生する振動について、地域を指定して規制を行っている。地域の指定は知事が行うことになっており、「都市計画法」に基づく用途地域の区分に準拠して全市町で指定を行っている(20年3月末現在)。なお、中核市である宇都宮市においては、宇都宮市長が指定を行っている。
- (イ) 「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に基づく規制
- 「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、「振動規制法」で規制されている地域以外における工場・事業場及び特定建設作業から発生する振動について規制を行っている。このため、法と条例により県内全域が規制の対象となっている。
- (ウ)工場・事業場対策の推進
- 振動に係る規制の事務は、市町村長の事務として、実態に即したきめ細かな指導が行われ、振動公害の未然防止を図っている。
中小企業者等には、振動防止施設の設置・改善のために融資制度による支援を行っている。
(2) 交通騒音・振動防止対策の推進
ア 自動車騒音・振動防止対策
道路交通騒音が深刻な地域について総合的な施策を講ずべく、9年3月に「栃木県沿道環境整備協議会」(会長:国土交通省関東地方整備局宇都宮国道事務所長)が設立され、関係機関により、低騒音舗装などによる「道路構造対策」、道路網の整備などによる「交通流対策」、緑地帯の整備などによる「沿道対策」などの対策を講じている。
高速自動車道については、関係県と連携し、東日本高速道路に対して騒音の低減対策等を要請している。
イ 新幹線鉄道騒音・振動防止対策
東日本旅客鉄道(株)では、10年度から14年度にかけて「第3次75デシベル対策」として住宅立地地域のうち75デシベルを超える地点について対策を講じており(上り下り合計11.9km)、県が対策地点11箇所について調査を実施したところ、すべての箇所においてピーク騒音レベルが75デシベル以下となった。しかしながら、第1次から第3次の対策区間以外の区間において75デシベルを達成していない地域が残されていることから、東日本旅客鉄道(株)では引き続き「75デシベル対策」として、低騒音の新型車両の導入や防音壁の設置等による発生源対策を実施している。
県では、環境基準達成に向け、沿線の市町と構成する「栃木県新幹線公害対策連絡会議」で東日本旅客鉄道(株)に対して騒音の低減対策を要請している。
(3) 近隣騒音対策の推進
ア 拡声機騒音対策
「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、県内全域を対象として、商業宣伝を目的とする拡声機の使用を制限している。「騒音規制法」に基づく区域及び区域外の地域ごとに拡声機の音量の基準を定め、拡声機の使用時間及び使用方法について遵守事項を定めている。また、航空機による拡声機を用いた商業宣伝は、県内全域において禁止としている。
イ 深夜営業騒音対策
「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、県内全域を対象として、飲食店や娯楽場等の深夜(午後10時〜翌日午前6時)営業騒音について、「騒音規制法」に基づく区域及び区域外の地域ごとに音量の遵守基準を定めている。また、深夜における騒音の防止を図る必要がある地域を定め、飲食店等において音響機器の使用を禁止している(ただし、音響機器から発生する音が外部に漏れない場合を除く。)。
ウ 日常生活等騒音・振動対策
「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、県内全域を対象として、『日常生活又は事業活動に伴って発生する騒音又は振動により、周辺の生活環境を損なうことのないように努める』との努力規定を定めている。
(4) 悪臭対策の推進
ア 「悪臭防止法」に基づく規制
工場・事業場における事業活動に伴って発生するにおいに対しては、「悪臭防止法」により規定されたアンモニア、硫化水素等22の特定悪臭物質について、地域を指定して規制を行っている。
規制地域の指定は知事が行うことになっており、「都市計画法」の用途地域に準拠して全市町で指定を行っているほか、一部の学校、病院、老人ホーム等の周辺についても指定を行っている(20年3月末現在)。なお、中核市である宇都宮市においては、宇都宮市長が指定を行っている。
イ 「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に基づく規制
「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、特に悪臭が発生する養豚・養鶏施設等8施設を特定施設として定め、県内全域を対象とする届出制とし、施設の種類ごとに規制基準(管理上の基準)を定めている。
また、県内全域のすべての工場・事業場を対象とした、悪臭を施設の外部へ漏れにくくするための遵守事項(管理上の基準)を定めている。
ウ 嗅覚測定法(三点比較式臭袋法)による指導
「悪臭防止法」に基づく特定悪臭物質による規制は、機器を用いて特定悪臭物質ごとの濃度を測定する方法により悪臭を規制しているため、低濃度多成分による複合臭気への対応が困難である。そこで、「悪臭防止法」が一部改正され、8年から従来の機器を用いた測定方法と、ヒトの嗅覚を用いた測定法(嗅覚測定法に基づく臭気指数規制)のいずれかを採用できることとなった。県では、嗅覚測定法の積極的な導入を図るため、市町に対してその普及啓発を行っている。
また、法の改正に先駆け、悪臭防止に係る行政指導の効果的な推進を図るため、嗅覚測定法(三点比較式臭袋法)を用いた「官能試験法による栃木県悪臭防止対策指導要綱」を定め、県内全域を対象として、指導等を実施している。
エ 工場等に対する指導等
悪臭に係る規制の事務は、市町村長の事務として、実態に即したきめ細かな指導が行われ、悪臭公害の未然防止を図っている。
中小企業者等には、悪臭防止施設の設置・改善のために融資制度による支援を行っている。
オ 家畜排せつ物処理のための施設、機械整備に対する助成等
家畜排せつ物を適正に処理することにより悪臭の発生を低減することができることから、処理施設整備の助成による支援を行うとともに、臭気調査に基づいたきめ細やかな農家指導を行い、悪臭公害の未然防止を図っている。
カ 畜産における悪臭低減技術の開発等
畜産試験場において簡易な脱臭システムの開発に係る研究を実施している。
(5) 良好な音・かおり環境の保全
ア 音環境の保全
無駄な音、迷惑がられる音である騒音を低減し、好ましい音環境を実現しようとする取組の一つとして、環境省において「残したい日本の音風景100選」を選定している。
県内においては、「太平山あじさい坂の雨蛙」(栃木市)が選定されている。
イ かおり環境の保全
良好なかおりとその源となる自然や文化を保全・創出しようとする地域の取組の支援の一環として、環境省において「かおり風景100選」を選定している。
県内においては、「今市竜蔵寺の藤と線香」(日光市)、「日光霧降高原のニッコウキスゲ」(日光市)及び「那須八幡のツツジ」(那須町)が選定されている。