第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策
第1章 環境への負荷の少ない循環型の社会づくり
第2節 | 水環境の保全 |
1 水環境の状況
(1)環境基準等
水質汚濁に係る環境基準は、「環境基本法」により人の健康の保護に関する基準と生活環境の保全に関する基準とが定められている。これは、公共用水域及び地下水の水質保全のための行政上の目標として位置付けられている。
このうち、人の健康の保護に関する環境基準は、すべての公共用水域及び地下水に一律に適用され、カドミウム等26項目が定められている。(表2−1−15)また、12年1月の「ダイオキシン類対策特別措置法」の施行により、ダイオキシン類についても環境基準が定められた。
生活環境の保全に関する環境基準は、上水道、農業用水など、公共用水域の利水目的に応じて河川、湖沼の水域ごとに類型指定が行われている。(表2−1−16)
本県においては、川俣ダム貯水池が15年3月に国の類型指定を受けたことで69水域となった。なお、本県では17年1月に11水系の類型改定等による見直しを行った。(表2−1−17)また、15年11月に「水生生物の保全に係る水質環境基準」に全亜鉛が追加されたことから、水質の類型あてはめについて検討を始めた。
この他に環境基準に準ずるものとして、公共用水域及び地下水を対象とした「要監視項目」27項目及び「公共用水域等における農薬の水質評価指針」27項目が定められている。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(注)ダイオキシン類に係る環境基準については、第5章 表2−1−43に示す。 |
類型 | 河川に係る基準値 | 湖沼に係る基準値 | ||||||||
水素イオン 濃度 (pH) |
生物化学的 酸素要求量 (BOD) |
浮遊物質量 (SS) |
溶存酸素量 (DO) |
大腸菌 群数 |
水素イオン 濃度 (pH) |
生物化学的 酸素要求量 (BOD) |
浮遊物質量 (SS) |
溶存酸素量 (DO) |
大腸菌 群数 |
|
AA | 6.5以上 8.5以下 |
1mg/l 以下 |
25mg/l 以下 |
7.5mg/l 以下 |
50MPN/ 100ml以下 |
6.5以上 8.5以下 |
1mg/l 以下 |
1mg/l 以下 |
7.5mg/l 以下 |
50MPN/ 100ml以下 |
A | 6.5以上 8.5以下 |
2mg/l 以下 |
25mg/l 以下 |
7.5mg/l 以下 |
1000MPN/ 100ml以下 |
6.5以上 8.5以下 |
3mg/l 以下 |
5mg/l 以下 |
7.5mg/l 以下 |
1000MPN/ 100ml以下 |
B | 6.5以上 8.5以下 |
3mg/l 以下 |
25mg/l 以下 |
5mg/l 以下 |
5000MPN/ 100ml以下 |
6.5以上 8.5以下 |
5mg/l 以下 |
15mg/l 以下 |
5mg/l 以下 |
− |
C | 6.5以上 8.5以下 |
5mg/l 以下 |
50mg/l 以下 |
5mg/l 以下 |
− | 6.0以上 8.5以下 |
8mg/l 以下 |
ごみ等の浮遊が認められないこと | 2mg/l 以下 |
− |
D | 6.0以上 8.5以下 |
8mg/l 以下 |
100mg/l 以下 |
2mg/l 以下 |
− | |||||
E | 6.0以上 8.5以下 |
10mg/l 以下 |
ごみ等の浮遊が認められないこと | 2mg/l 以下 |
− |
|
|
区分 | 河川・湖沼数 | 水域数 | 類型別水域数内訳 | 環境 基準 地点数 |
|||||||||
AA | A | B | C | D | E | I | II | III | |||||
河 川 |
那珂川水系 | 14 | 15 | 2 | 13 | 16 | |||||||
鬼怒川・小貝川水系 | 16 | 20 | 4 | 10 | 3 | 3 | 21 | ||||||
渡良瀬川水系 | 18 | 29 | 1 | 10 | 14 | 3 | 1 | 30 | |||||
小計 | 48 | 64 | 7 | 33 | 17 | 6 | 1 | 67 | |||||
湖沼 | 5 | 5 | 3 | 2 | 2 | 2 | 1 | 5 | |||||
合計 | 53 | 69 | 10 | 35 | 17 | 6 | 1 | 2 | 2 | 1 | 72 |
(注) | 1 | 渡良瀬川上流水域について、当該水域数には計上しているが、同水域の環境基準地点(高津戸=群馬 県みどり市所在)は地点数に含まれていない。 |
2 | 類型のうち、I〜IIIについては窒素及びりんに係る類型を示す。 | |
3 | 押川(久慈川水系)は那珂川水系に、西仁連川(利根川に直接流入する)は渡良瀬川水系に含む。 | |
4 | 現在の類型は、17年1月28日に改定されたものである。 |
(2)河川水質の現況
ア 概況
本県の河川は、ごく一部を除き那珂川、鬼怒川・小貝川及び渡良瀬川の三大水系に分けられ、その流域は、県土のほぼ3分の1ずつに等分される。
県内の公共用水域の水質汚濁の状況を監視するため、「水質汚濁防止法」に基づき策定した「公共用水域の水質測定計画」により、19年度は、類型指定している48河川と環境基準点のない13河川の合計61河川130地点において水質調査を実施した。その結果、人の健康の保護に関する項目(健康項目)については、すべての地点で環境基準を達成した。
生活環境の保全に関する項目(生活環境項目)について、河川の有機性汚濁の指標であるBODで環境基準の達成状況を見ると、県全体の達成率は84%であり、前年度(94%) より低下している。(図2−1−16)
水系別のBODの環境基準達成率は、那珂川水系が100%、鬼怒川・小貝川水系が80%、渡良瀬川水系が79%で、那珂川水系の達成率は前年度と同じであったが、鬼怒川・小貝川水系及び渡良瀬川水系の達成率は低下した。
類型別のBODの環境基準達成率は、A類型とD類型は前年度と同様であったが、AA類型、B類型及びC類型は低下した。(表2−1−18)
生活環境項目別の環境基準適合状況を前年度と比較すると、大腸菌群数は高くなったが、pH、DO、BOD及びSSの適合率は横ばいであった。
生活環境項目では、那珂川水系は他水系と比較してBODの適合率が96.4%と高いが、大腸菌群数の適合率は14.2%と低い。(表2−1−19)
主要河川の県内末流地点における水質の経年変化をBODの年平均値で比較すると、各河川とも概ね横ばいで推移している。(図2−1−17)
類型 | 年度/水域数 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
AA | 7 | 100 | 75 | 100 | 50 | 75 | 100 | 75 | 100 | 100 | 71 |
A | 33 | 91 | 80 | 91 | 91 | 94 | 100 | 94 | 94 | 100 | 97 |
B | 17 | 59 | 59 | 71 | 59 | 77 | 76 | 71 | 82 | 94 | 82 |
C | 6 | 33 | 50 | 83 | 50 | 67 | 83 | 50 | 50 | 67 | 50 |
D | 1 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 0 | 0 | 0 | 0 |
E | 0 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | - | - | - |
計 | 64 | 77 | 72 | 86 | 77 | 86 | 92 | 81 | 86 | 94 | 84 |
(注) | 1 | 達成率=環境基準達成水域数/類型指定水域数×100 |
2 | 各環境基準点(渡良瀬川上流水域は補助地点)において、BODの75%値が当該水域の環境基準に適合している場合を環境基準達成水域とした。以下、本節中に同じ。 |
水系名 | 地点数 | pH | DO | BOD | SS | 大腸菌群数 |
那珂川 | 33 | 69.4 | 100 | 96.4 | 99.8 | 14.2 |
鬼怒川・小貝川 | 45 | 99.3 | 95.9 | 86.5 | 98.4 | 18.2 |
渡良瀬川 | 44 | 100 | 98.9 | 88.7 | 95.6 | 27.1 |
計 | 122 | 98.7 | 98.3 | 90.4 | 97.8 | 19.9 |
前年度 | 122 | 98.2 | 98.4 | 92.4 | 97.4 | 9.6 |
(注) | 1 | 環境基準類型指定の全調査地点を対象とした。なお、那珂川水系の適合率は押川の測定値を含めて算出した。 |
2 | 適合率=環境基準適合検体数/調査実施検体数×100 ※以下、本節中に同じ。 |
図2−1−17 主要河川県内末流地点の水質の推移(BOD 年平均値)
イ 各水系の概要
19年度における各水系ごとの水質の状況は次のとおりであった。
- (ア)那珂川水系の水質
- 那珂川水系に属する河川の15水域における環境基準類型指定状況はAA又はA類型で、他水系に比較し、水質的に良好な河川が多い。
環境基準達成状況をBODで見ると、前年度と同様15水域全てにおいて環境基準を達成しており、達成率は100%となった。(表2−1−20)
那珂川本川の水質流程変化をBODを指標として見ると、全域で1.0mg/l前後の推移となっており、良好な水質を維持している。(図2−1−18)
区分 | 類型 | 水域名 | 環境基準地点 | 適合率 (%) |
75%値 (mg/l) |
平均値 (mg/l) |
5年間 平均値 (mg/l) |
水域数の合計 及び構成比 |
環境基準を達成した水域 | AA | 那珂川(1) 高雄股川 |
恒明橋 高雄股橋 |
75 83 |
1.0 0.9 |
0.8 0.8 |
0.8 0.7 |
15水域 (H18:15水域) 構成比:100% (H18:100%) |
A | 那珂川(2) 湯川 余笹川 黒川 松葉川 箒川 蛇尾川 武茂川 荒川 内川 江川 逆川 押川 |
新那珂橋 野口 湯川橋 川田橋 新田橋 末流 箒川橋 宇田川橋 更生橋 向田橋 旭橋 末流 末流 越地橋 |
100 100 100 100 100 100 100 100 92 92 100 83 92 92 |
0.9 |
0.7 0.8 0.8 1.0 1.1 1.1 1.0 0.8 1.2 1.2 1.1 1.3 1.2 1.0 |
1.0 0.9 0.9 1.1 1.2 1.0 1.0 0.8 1.5 1.1 1.4 1.6 1.2 0.9 |
(注)1 | 5年間平均とは、15年度〜19年度の75%値の平均値である。表2−1−21、表2−1−22において同じ。 |
図2−1−18 那珂川の水質流程変化(BOD75%値)
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- (イ)鬼怒川・小貝川水系の水質
- 鬼怒川・小貝川水系に属する河川の20水域における環境基準類型指定状況は、AA類型からC類型までの4類型である。
環境基準達成状況をBODで見ると、16水域で達成しており、達成率は80%と前年度(95%)より低下した。(表2−1−21)
鬼怒川本川の水質流程変化をBODを指標として見ると、県内全域で1.0mg/l前後の推移となっており良好な水質を維持しているが、県内を流れる田川が県境を越えて合流する付近から悪化しているような状況にある。(図2−1−19)
区分 | 類型 | 水域名 | 環境基準地点 | 適合率 (%) |
75%値 (mg/l) |
平均値 (mg/l) |
5年間 平均値 (mg/l) |
水域数の合計 及び構成比 |
環境基準を達成した水域 | AA | 鬼怒川(1) 男鹿川 |
川治第一発電所前 末流 |
100 100 |
0.7 0.7 |
0.5 0.5 |
0.6 0.6 |
16水域 (H18:19水域) 構成比:80% (H18:95%) |
A | 鬼怒川(2) 湯川 西鬼怒川 江川下流 田川上流 赤堀川 小貝川 五行川 野元川 行屋川 |
鬼怒川橋 川島橋 末流 西鬼怒川橋 末流 大曽橋 木和田島 三谷橋 桂橋 末流 常盤橋 |
100 100 100 92 83 100 100 86 100 100 83 |
1.1 1.3 1.1 1.5 1.6 1.5 1.2 1.7 1.6 1.3 1.8 |
0.9 1.0 1.0 1.2 1.5 1.4 1.1 1.6 1.4 1.1 1.6 |
0.9 1.2 1.0 1.1 1.5 1.7 1.1 1.4 1.5 1.2 1.6 |
||
B | 志渡渕川 江川上流 |
筋違橋 高宮橋 |
92 83 |
2.1 2.3 |
1.7 2.0 |
1.9 2.0 |
||
C | 田川中流 釜川 |
明治橋 つくし橋 |
83 100 |
3.9 1.9 |
3.3 1.5 |
4.9 2.1 |
||
環境基準を達成しない水域 | AA | 坂穴川 大谷川 |
末流 開進橋 |
50 67 |
1.2 1.1 |
1.1 0.9 |
0.9 0.7 |
4水域 (H18:1水域) 構成比:20% (H18:5%) |
B | 田川下流 | 梁橋 | 67 | 3.1 | 2.8 | 3.1 | ||
C | 御用川 | 錦中央公園 | 58 | 5.5 | 5.1 | 5.7 |
図2−1−19 鬼怒川の水質流程変化(BOD75%値)
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- (ウ)渡良瀬川水系の水質
- 渡良瀬川水系に属する河川の29水域における環境基準類型指定状況は、AA類型からD類型までの5類型にわたっている。
環境基準達成状況をBODで見ると、23水域で達成し、達成率は79%と前年度(90%)より低下した。(表2−1−22)
渡良瀬川本川の水質流程変化をBODで見ると、上流域では比較的良好な水質を示しているが、渡良瀬大橋付近から急に悪化している。(図2−1−20)
区分 | 類型 | 水域名 | 環境基準地点 | 適合率 (%) |
75%値 (mg/l) |
平均値 (mg/l) |
5年間 平均値 (mg/l) |
水域数の合計 及び構成比 |
環境基準を達成した水域 | AA | 大芦川 | 赤石橋 | 100 | 0.8 | 0.7 | 0.7 | 23水域 (H18:26水域) 構成比:79% (H18:90%) |
A | 渡良瀬川上流 神子内川 松田川上流 旗川上流 才川 秋山川上流 永野川上流 思川上流 黒川 |
沢入発電所渡良瀬川取水堰 末流 新松田川橋 高田橋 末流 小屋橋 堀米橋 星野橋 大岩橋 保橋 御成橋 |
100 100 100 91 83 100 92 100 100 100 92 |
<0.5 0.9 1.2 1.1 1.4 0.8 1.5 0.9 1.0 0.8 1.6 |
0.6 0.7 1.0 1.1 1.5 0.7 1.2 0.8 0.9 0.7 1.3 |
0.9 0.7 0.9 1.1 1.4 0.7 1.4 0.7 0.8 0.8 1.2 |
||
B | 渡良瀬川(2) 渡良瀬川(3) 渡良瀬川(4) 小俣川下流 袋川上流 旗川下流 出流川 巴波川下流 永野川下流 思川下流 姿川 西仁連川 |
葉鹿橋 渡良瀬大橋 三国橋 末流 助戸 末流 末流 巴波橋 落合橋 乙女大橋 宮前橋 武井橋 |
100 96 75 83 75 92 92 83 100 100 100 83 |
1.0 1.9 3.0 2.3 2.5 2.4 2.4 2.7 1.9 1.9 1.9 2.2 |
0.8 1.6 2.6 2.1 2.1 2.1 2.1 2.3 1.5 1.6 1.6 2.2 |
1.1 2.0 2.9 2.6 2.1 2.4 3.2 2.2 1.9 1.8 2.0 2.7 |
||
C | 秋山川下流 | 末流 | 88 | 3.9 | 2.6 | 5.8 | ||
環境基準を達成しない水域 | A | 小俣川上流 | 新上野田橋 | 33 | 6.4 | 4.5 | 3.8 | 6水域 (H18:3水域) 構成比:21% (H18:10%) |
B | 松田川下流 三杉川 |
末流 末流 |
17 83 |
7.6 1.4 |
6.2 1.5 |
11 3.5 |
||
C | 矢場川 巴波川上流 |
矢場川水門 吾妻橋 |
83 42 |
2.8 6.1 |
2.5 5.9 |
4.3 7.8 |
||
D | 袋川下流 | 袋川水門 | 50 | 10 | 7.3 | 9.7 |
図2−1−20 渡良瀬川の水質流程変化(BOD75%値)
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ウ 水生生物による水質調査
本県では、昭和59年度から17年度まで、水質階級の指標となる生物の生息数等を調査し、水質の判定を行い、生物学的水質階級を評価する方法で水生生物による水質調査を行ってきた。しかし、その調査手法の複雑さや信頼性の点から見直しを行い、18年度から、大型底生動物による河川水域環境評価マニュアル(スコア法)に手法を変更した。
スコア法では、平均スコア値(ASPT値)を指標とするが、これは河川の水質状況に加え、周辺環境もあわせた総合的な河川の環境の良好性を相対的に表す指標となっており、より広い意味での評価を行うことができる。このASPT値は1〜10までの値で示され、値が高いほど、汚濁の程度が少なく自然状態に近いなど、人為影響も少ない河川環境であることを示している。
この評価方法により、19年度には渡良瀬川水系の26地点の調査を実施した。その結果、最も評価の高かったのは、神子内川の末流と永野川の星野橋でASPT値は8.0、最も低かったのは、袋川の袋川水門でASPT値は2.9であった。(表2−1−23)
No. | 河川名 | 地点名 | ASPT値 | No. | 河川名 | 地点名 | ASPT値 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 渡良瀬川 | 葉鹿橋 | 7.0 | 14 | 秋山川上流 | 堀米橋 | 7.3 |
2 | 神小内川 | 末流 | 8.0 | 15 | 秋山川下流 | 末流 | 5.4 |
3 | 小俣川上流 | 新上野田橋 | 6.9 | 16 | 三杉橋 | 末流 | 4.6 |
4 | 小俣川下流 | 末流 | 7.1 | 17 | 巴波川上流 | 吾妻橋 | 5.5 |
5 | 松田川上流 | 新松田川橋 | 7.3 | 18 | 巴波川下流 | 巴波橋 | 6.6 |
6 | 松田川下流 | 末流 | 6.7 | 19 | 永野川上流 | 星野橋 | 8.0 |
7 | 袋川上流 | 助戸 | 6.4 | 20 | 永野川上流 | 大岩橋 | 7.4 |
8 | 袋川下流 | 袋川水門 | 2.9 | 21 | 永野川下流 | 落合橋 | 7.0 |
9 | 旗川上流 | 高田橋 | 7.1 | 22 | 思川上流 | 保橋 | 7.8 |
10 | 旗川下流 | 末流 | 6.6 | 23 | 思川下流 | 乙女大橋 | 6.3 |
11 | 出流川 | 末流 | 6.4 | 24 | 大芦川 | 赤石橋 | 7.8 |
12 | 才川 | 末流 | 5.5 | 25 | 黒川 | 御成橋 | 7.7 |
13 | 秋山川上流 | 小屋橋 | 7.8 | 26 | 姿川 | 宮前橋 | 7.1 |
(注)調査は、5月と11月に実施した。 |
(3) 湖沼水質の現況
ア 概 況
近年、全国的な傾向として、窒素、りん等の栄養塩類が湖沼へ流入することにより、植物プランクトン等が大量繁殖し、水質の悪化や上水道における異臭味の発生等の障害が生じる富栄養化現象が見受けられる。
湖沼の水質についての環境基準は、生活環境項目に加え、富栄養化の原因となる窒素、りんについても設定されており、本県ではそれぞれの湖沼の利水状況に応じて中禅寺湖はAA類型・I類型(全りんのみ)、湯の湖はA類型・III類型、深山ダム貯水池はAA類型・I類型(全りんのみ)、川治ダム貯水池はAA類型・II類型にそれぞれ類型指定されている。
また、15年3月に川俣ダム貯水池(A類型・II類型(全りんのみ))が新たに国の類型指定を受けた。
イ 各湖沼の水質
19年度における各湖沼ごとの水質の状況は次のとおりであった。
- (ア)中禅寺湖の水質
- 中禅寺湖は面積11.5km2、最大水深163m、湖水の滞留日数は約6年で、標高1,269mに位置している天然堰止め湖であり、湖沼としては貧栄養湖に属している。
COD(湖心:表層75%値)は1.4mg/l(基準値1mg/l)、全りん(湖心:表層)は0.008mg/l(基準値0.005mg/l)であり、いずれも環境基準を達成していない。過去5年間を見るとCODは改善が見られるが、全りんではわずかに上昇の傾向となっている。(図2−1−21)
図2−1−21 中禅寺湖の水質の推移
- (イ)湯の湖の水質
- 湯の湖は面積0.35km2、最大水深14.5mで標高1,478mに位置している天然堰止め湖である。湖水の滞留日数は約30日で、水深も浅く、富栄養化しやすい湖沼といえる。
COD(湖心:全層75%値)は2. 2mg/l(基準値3mg/l)、全窒素(湖心:表層)は0.36mg/l(基準値0.4mg/l)、全りん(湖心:表層)は0.021mg/l(基準値0.03mg/l)であり、いずれの項目も環境基準を達成している。過去5年間で見ると、COD、全窒素、全りんともほぼ横ばいで推移している。(図2−1−22)
図2−1−22 湯の湖の水質の推移
- (ウ)人工湖の水質
- 人工湖の水質状況を把握するため、「公共用水域の水質測定計画」に基づき、5貯水池について調査を実施している。
深山ダム貯水池では、COD(75%値)は0.9mg/l(基準値1mg/l)、全窒素は0.30mg/l(基準値0.1mg/l)、全りんは0.005mg/l(基準値0.005mg/l、H18暫定目標値0.011mg/l)であり、COD、全りんは環境基準を達成している。
川治ダム貯水池では、COD(75%値値)は1.7mg/l(基準値1mg/l、暫定目標値2mg/l)、全窒素は0.48mg/l(基準値0.2mg/l、暫定目標値0.32mg/l)、全りんは0.017mg/l(基準値0.01mg/l、暫定目標値0.021mg/l)であり、いずれの項目も環境基準を達成していない。川俣ダム貯水池では、COD( 75%値値) は1.5mg/l(基準値3mg/l)、全窒素は0.36mg/l(基準値0.2mg/l)、全りんは0.008mg/l(基準値0.01mg/l)であり、COD、全りんは環境基準を達成している。(図2−1−23)
その他の人工湖の水質については、いずれも前年度並みであった。
図2−1−23 人工湖の水質(19年度)
(4) 地下水水質の現況
ア 概況
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等による地下水汚染については、新たに10地区で汚染が確認され、4地区で汚染が終息し、20年3月末現在で地下水汚染の地区数は、87地区となっている。なお、昭和60年度からの累計では、20年3月までに150地区の汚染が確認され、そのうち63地区の汚染が終息している。
イ 地下水水質の状況
県内の地下水の水質汚濁の状況を監視するため、「水質汚濁防止法」に基づき策定した「地下水の水質測定計画」により、実態把握のための概況調査及び汚染地区の監視のための定期モニタリング調査を実施した。19年度の調査結果は、次のとおりであった。
- (ア)概況調査結果
- 県内135地点で概況調査を実施したところ、1地点(日光市)でふっ素、5地点(下野市、二宮町、益子町、大平町、藤岡町)で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素について環境基準を達成しなかった。
- (イ)定期モニタリング調査結果
- 地下水汚染が確認されている地区において、汚染状況の監視のための定期モニタリング調査を実施した。汚染の拡大は見られなかった。
- (ウ) その他の調査による汚染の確認
- 佐野市でトリクロロエチレン等3物質、真岡市で六価クロム、那須塩原市でトリクロロエチレン、藤岡町でほう素による汚染を新たに1地区ずつ確認した。
また、佐野市で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による汚染を新たに2地区確認した。
2 水環境保全対策
(1)公共用水域水質保全の推進
ア 公共用水域の常時監視
「水質汚濁防止法」に基づき「公共用水域の水質測定計画」を策定し、県内の公共用水域の水質汚濁状況を監視している。常時監視結果は、水質の汚濁が著しい地点を把握し、対策を講じるための、また、各種水質保全事業を実施している地点においては対策の効果を確認するための基礎資料となっている。
イ 河川水質保全事業
汚濁の著しい河川や湖沼において、水質の保全や改善を図るために汚泥のしゅんせつ及び浄化施設の設置等を実施している。また、5年度に、国土交通省より、水質の汚濁が著しく生活環境の悪化が顕著な河川等において、市町村、河川管理者、下水道管理者及び関係機関が一体となって西暦2000年までに良好な水環境を取り戻すため、「水環境改善緊急行動計画(清流ルネッサンス21)」を策定し、実施していくことが提唱された。水質汚濁が進んだ河川では、水環境改善緊急行動計画が策定され、巴波川(栃木市)、蓮台寺川(足利市)の浄化対策事業が11年度に完了している。さらに矢場川(足利市)の浄化対策事業が12年度から着手され、17年度に完了した。
また、18年3月に第2期水環境改善計画(清流ルネッサンスII)を策定し、更なる水質改善に向けての取組を実施している。
ウ 湖沼水質保全事業
「水質汚濁防止法」に基づき、「窒素、りんに係る排水基準」の適用対象湖沼として指定された主要湖沼の水質保全を図るため、昭和61年5月に「栃木県湖沼水質管理計画」を策定した。
計画期間満了後の4年4月には「栃木県湖沼水質保全基本指針」を策定し、特に奥日光地域の湖沼については、この指針に基づく「中禅寺湖・湯の湖水質保全計画」により4年度から8年度まで水質保全対策(湯の湖における底質汚泥のしゅんせつ工事等)を実施した。
7年度には、県及び日光市が「奥日光清流清湖保全協議会」を設立し、10年度からの5カ年計画(途中、計画期間を3年間延長して17年度までの8カ年計画)として策定した「奥日光清流清湖保全計画」に基づき水質保全対策を実施した。この中で、湯の湖に繁茂している水草コカナダモについて、13年度から15年度にかけて刈取船による試験除去を実施したところ、栄養塩類の湖外除去に一定の効果があると認められたため、16年度以降は日光市との共同事業として継続実施している。17年度には、さらに18年度からの10カ年計画として「第2期奥日光清流清湖保全計画」を策定し、水質保全対策を継続して実施することとした。18及び19年度は、水草コカナダモの人力除去作業等を実施した。
エ 異常水質対策
異常水質の早期対応を図るため、「栃木県異常水質対策要領」に基づき、通報連絡体制を整備し、異常水質発生時には、必要な連絡調整及び水質保全対策等を実施している。
19年度の異常水質発生件数は89件(前年度79件)で、このうち52件が油流出である。最近の傾向としては、油類流出が多い。(表2−1−24)
近年の異常水質発生件数は、年度により増減があるものの、全体としては増加傾向にある。工場・事業場等における油類等の安全管理の徹底、流出防止工の設置の指導、地域住民の水質保全に対する意識の高揚といった施策を継続して実施している。
状況 | 発生件数 | 発生源 | |
---|---|---|---|
特定事業場 | その他 | ||
油類流出 | 52 | 8 | 44 |
魚類浮上 | 21 | 0 | 21 |
その他の河川汚濁 | 16 | 6 | 10 |
計 | 89 | 14 | 75 |
(2)生活排水対策の推進
公共用水域の水質保全と県民の快適な生活環境を確保するため、県では生活排水処理施設整備のマスタープランである「栃木県生活排水処理構想」を策定し、行政区域全体について公共下水道、農業集落排浄化槽等の経済的かつ効率的な整備を推進している。これら生活排水処理施設の普及率は、19年度末現在て74.3%である。(図2−1−24)
図2−1−24 市町別生活排水処理人口普及状況(19年度末)
ア 下水道の整備・普及
- (ア)公共下水道
- 公共下水道の普及率は、19年度末において58.1%と、年々向上が図られているものの、全国平均70.5%(18年度末)に比べると未だ低い状況にある。
公共下水道は、昭和32年に宇都宮市が事業に着手し、以降各市町で次々と事業を実施し、19年度末において全市町(14市17町)で事業を実施し、14市16町で供用を開始している。(図2−1−25) - (イ)流域下水道
- 流域下水道は、昭和51年度に鬼怒川上流流域下水道(上流処理区)の事業を着手したのを始め、順次、巴波川流域下水道、北那須流域下水道、鬼怒川上流流域下水道(中央処理区)、渡良瀬川下流流域下水道(大岩藤処理区)、渡良瀬川下流流域下水道(思川処理区)、渡良瀬川上流流域下水道の計5流域7処理区で事業を実施し、全処理区で供用を開始している。なお、流域下水道に関連する市町は19年度末現在で8市9町となっている。(表2−1−25)
図2−1−25 公共下水道事業実施市町位置図(19年度末)
表2−1−25 流域下水道計画(19年度末)
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イ 農業集落排水施設の整備・普及
- (ア)農業集落排水事業の目的
- 本事業は、農村地域の水質保全と農村生活環境の改善、資源等のリサイクルを図るため、農業集落排水施設の整備を通して、処理水の農業用水への再利用、汚泥の肥料化等を促進することを目的としている。
宇都宮市をはじめ、真岡市、佐野市、益子町、二宮町、芳賀町においては、汚泥と石灰を混合する料化装置(図2−1−26)やコンポスト施設により農地還元を行っている。 - (イ)19年度までに着手した農業集落排水事業
- 農業振興地域内の集落を対象とした汚水処理施設整備は、農業集落排水事業と各種の総合整備事業の中で、昭和59年度より真岡市、佐野市で着手し、19年度までに25市町93地区で施設整備が完了している。
1地区の工期は、5〜6年であり、短期間で供用を開始して、早期の効果発現を図っている。(図2−1−27)
19年度までの農業集落排水事業実施状況
着手地区数:101地区
完了地区数:93地区
完了地区人口:88,919人
県全体の普及率:4.4%
図2−1−26 汚泥と石灰を混合する肥料化装置の事例
(設置地区宇都宮市:板戸地区佐野市:常盤地区真岡市:東郷地区、東大島地区 益子町:長堤地区、小宅地区)
ウ 浄化槽の設置促進
下水道や農業集落排水事業のように終末処理施設を設置し、し尿及び生活雑排水を処理することが必ずしも合理的・経済的でない地域の生活環境の保全及び公衆衛生の向上を目的に、浄化槽の整備を推進している。
また、浄化槽の維持管理に関しては、「浄化槽法」に基づき浄化槽設置者が浄化槽の保守点検や定期検査を実施することとなっており、その適正な管理について指導している。
- (ア)浄化槽設置整備事業(個人設置型)
- 市町が、浄化槽設置整備事業実施要綱に基づき浄化槽の設置者に対して設置に要する費用を補助した場合、国及び県が市町に対して助成しており、現在、全市町が実施している。(表2−1−26)
・補 助 額
(県費)補助基準額×1/3 〔財政力指数により調整〕
(国費)補助基準額×1/3
年度 | 実施市町村数 | 設置基数 | 補助金額 | 年度 | 実施市町村数 | 設置基数 | 補助金額 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
10 | 49 | 2,499 | 322,299 | 15 | 48 | 3,861 | 435,011 |
11 | 49 | 2,650 | 337,745 | 16 | 42 | 3,876 | 431,481 |
12 | 49 | 3,038 | 356,503 | 17 | 33 | 3,636 | 396,450 |
13 | 49 | 3,244 | 368,168 | 18 | 31 | 3,570 | 379,918 |
14 | 49 | 3,580 | 407,138 | 19 | 31 | 3,181 | 300,033 |
- (イ)浄化槽市町村整備推進事業(市町村設置型)
- 6年度に国が創設した補助事業で、市町自らが設置主体となって浄化槽の面的整備を図るものである。(表2−1−27)
・補助額 (国費)浄化槽設置費×1/3
本県においては、13年度に県内で初めて大田原市(旧黒羽町)が導入したが、今後、本事業の積極的な活用について、他の市町へ働きかけていく必要がある。 - (ウ)市町村浄化槽排水管等敷設事業
- 15年度に創設した県の支援事業で、上記(イ)の浄化槽市町村整備推進事業を導入した市町において、当該事業地内で浄化槽の排水先を確保するために必要な排水管等敷設事業を実施した場合に、県が市町に対して助成している。(表2−1−27)
・補助額 補助対象事業費×1/2又は整備基数×12万円のいずれか少ない方の額
年度 | 浄化槽市町村整備推進事業 | 市町村浄化槽排水管等敷設事業 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
実施市町村数 | 設置基数 | 補助金額 | 実施市町村数 | 事業地区数 | 補助金額 | |
13 | 1 | 94 | 33,000 | |||
14 | 1 | 121 | 30,830 | |||
15 | 1 | 109 | 39,723 | 1 | 1 | 3,000 |
16 | 3 | 88 | 31,721 | 1 | 2 | 327 |
17 | 3 | 108 | 36,051 | 1 | 1 | 1,575 |
18 | 2 | 71 | 23,910 | |||
19 | 2 | 94 | 31,739 | 1 | 1 | 46 |
(3)工場・事業場対策の推進
「水質汚濁防止法」及び「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に基づき工場・事業場への立入検査を実施している。
また、「工場・事業場排水等自主管理要領」に基づき、工場・事業場に対し、排出水の水質測定及び結果の報告を求めており、事業者が自主的に排水処理施設等の適切な維持管理を図るよう指導している。
ア 規制基準
本県では、水質汚濁防止法の規定に基づき、有害物質(六価クロム)及び生活環境項目(BOD、SS等)について、条例でより厳しい上乗せ排水基準(*)を定めている。また、「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、15種類の汚水に係る特定施設を定め、規制基準を設定している。
(*)生活環境項目のうち、BOD等については、一日当たりの平均的な排出水量が30m3(畜房は15m3)以上の特定事業場において適用している。(pHはすべての特定事業場に適用)
イ 水質関係特定事業場数
「水質汚濁防止法」に基づく特定事業場数は、8,240(県7,326、宇都宮市914)であり、これを業種等の区分別に見ると、畜産農業が2,102(25.5%)で最も多く、次に、旅館業1,712(20.8%)、自動式車両洗浄施設1,003 (12.2%)の順となっている。(図2−1−28)
また、「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に基づく汚水に係る特定工場数は398(県356、宇都宮市42)である。
図2−1−28 業種別特定事業場数(水質汚濁防止法)
ウ 立入検査状況
19年度は、延べ576事業場(県470、宇都宮市106)について立入検査を実施した。
立入検査した事業場のうち、延べ362事業場について排出水の分析を実施した。このうち329事業場(90.9%)が排水基準等に適合しており、排水基準等不適合の33事業場(9.1%)について、改善警告等の行政指導等を行った。(表2−1−28、表2−1−29)
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(注)立入検査実施数は、県分470、宇都宮市分106 |
年度 | 行政処分等 実施総数 |
排水基準不適合 | 地下浸透禁止 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
改善警告等 | 改善命令等 | 告発 | 改善警告等 | 勧告 | 改善命令 | 告発 | |||
改善命令 | 排出水の排水の 一時停止 |
||||||||
15 | 47 | 47 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
16 | 38 | 38 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
17 | 56 | 55 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
18 | 50 | 47 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
19 | 33 | 30 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
エ 業種別排出水の監視状況
- (ア)電気めっきを行う工場
- 電気めっき工場は、有害物質であるシアンや六価クロムなどを使用し、過去において魚類へい死や有害物質の地下浸透の事故が生じていることから、毎年重点的に監視指導を行っている。
19年度の排水基準適合率は、94.6%であった。(表2−1−30)
今後も、有害物質を使用する工場等に対しては、「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に規定された特定有害物質管理基準を遵守するよう指導を行うとともに、排水処理施設の更新、工場内の安全対策等一層の改善を指導していく。
年度 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | |
---|---|---|---|---|---|---|
採水事業場数(延べ) | 50 | 41 | 51 | 51 | 37 | |
検査結果 | 適合数 | 49 | 37 | 46 | 50 | 35 |
不適合数 | 1 | 4 | 5 | 1 | 2 | |
排水基準適合率(%) | 98.0 | 90.2 | 90.2 | 98.0 | 94.6 |
- (イ)表面処理作業を行う工場
- 表面処理工場は、酸やアルカリを使用するほか、一部の工場においては有害物質も使用することから、めっき工場に準じ監視指導を行っている。
19年度の排水基準適合率は、94.7%であった。(表2−1−31)
今後も、めっき工場に準じ、排水処理施設の更新、工場内の安全対策等の一層の改善、有害物質使用特定施設管理基準の遵守を指導していく。
年度 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | |
---|---|---|---|---|---|---|
採水事業場数(延べ) | 78 | 53 | 94 | 87 | 76 | |
検査結果 | 適合数 | 69 | 48 | 85 | 73 | 72 |
不適合数 | 9 | 5 | 9 | 14 | 4 | |
排水基準適合率(%) | 88.5 | 90.6 | 90.4 | 83.9 | 94.7 |
- (ウ)染色繊維工場
- 両毛地区には県内の染色繊維工場のうち8割以上が立地し、重要な地場産業を形成しており、その地域性から特定の河川に排水が集中しているため、その汚濁が懸念されている。
19年度の排水基準適合率は50.0%と低下したが、その原因は排水処理施設の老朽化や管理体制の不備によるものである。(表2−1−32)
また、この業種はBOD、SS等の有機性汚濁のほか、色や温排水等の問題があり、処理が難しく処理コスト等の課題もあるが、今後も、新しい処理技術の情報収集等に努め、排水処理施設の改善や水の再利用等による排水量削減等を指導していく。
年度 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | |
---|---|---|---|---|---|---|
採水事業場数(延べ) | 5 | 10 | 13 | 15 | 8 | |
検査結果 | 適合数 | 5 | 7 | 9 | 10 | 4 |
不適合数 | 0 | 3 | 4 | 5 | 4 | |
排水基準適合率(%) | 100.0 | 70.0 | 69.2 | 66.7 | 50.0 |
- (エ)食料品工場
- 食料品工場の排出水は、有機性汚濁物質や塩分の負荷が高く、また、生産量の増減に伴い水量・水質の変動も大きい等の要因から排水処理が難しいなどの問題がある。
19年度の排水基準適合率は、87.5%であった。(表2−1−33)
今後も排水処理施設の維持管理について指導していく。
年度 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | |
---|---|---|---|---|---|---|
採水事業場数(延べ) | 43 | 44 | 69 | 56 | 48 | |
検査結果 | 適合数 | 36 | 36 | 54 | 52 | 42 |
不適合数 | 7 | 8 | 15 | 4 | 6 | |
排水基準適合率(%) | 83.7 | 81.8 | 78.3 | 92.9 | 87.5 |
- オ ゴルフ場農薬による水質汚濁防止
- ゴルフ場における農薬の使用については、使用基準に沿った適正使用と危害防止に十分配慮した病害虫防除や除草を行うよう指導するとともに、農薬の安全かつ適正な管理及び使用の一層の確保を図るため、「栃木県ゴルフ場農薬安全使用指導要綱」に基づき、事業者が農薬を使用するに当たり、環境等への影響について十分配慮するとともに、排出水の水質を自主管理するよう指導している。
また、国において、地方公共団体が水質保全の面からゴルフ場を指導する際の参考となるよう「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」により、把握すべき農薬として45種類の農薬を定め、その濃度指針値を規定している。
県ではこの指針に基づき、昭和63年度から県独自の排出水等の水質調査を実施している。19年度は、10か所のゴルフ場において調査を実施したところ、指針値を超過したゴルフ場はなかった。
(4) 地下水の水質保全対策の推進
県内の地下水の汚染状況を監視するため、「水質汚濁防止法」に基づき「地下水の水質測定計画」を策定し、地域の全体的な地下水の水質の状況を把握するための概況調査及び汚染拡大を監視するための定期モニタリング調査を行っている。その結果、環境基準値を超過した場合には、「栃木県地下水汚染対策要領」に基づき、井戸所有者への飲用指導とともに、汚染発生源調査及び汚染井戸周辺地区調査を行い、地下水浄化対策を含む発生源への指導、汚染範囲の確定と周辺住民への周知等を行っている。
(5) 鉱山排水対策の推進
ア 足尾銅山対策
- (ア)公害防止協定
- 古河鉱業(株)(元年に古河機械金属(株)に社名変更)と群馬県太田市毛里田地区住民との「渡良瀬川沿岸における鉱毒による農作物被害に係る損害賠償調停事件」は、公害等調整委員会により、昭和49年5月に調停が成立した。
これを受け、栃木県は、渡良瀬川の水質と流域住民の生活環境を保全し公害の未然防止を図るため、群馬県及び古河鉱業(株)と三者による「公害防止協定」を昭和51年7月に締結し、山元調査(現地調査)等により、適正な坑廃水処理等について監視している。- 坑廃水処理対策
古河機械金属(株)は、旧鉱山坑内からの坑廃水及び堆積場(選鉱の過程で出た石くず等の鉱業廃棄物の施設)からの雨水処理について、中才浄水場まで配管で圧送し、含有物(重金属等)の沈殿、pH調整等の処理後、渡良瀬川に放流している。沈殿物は、簀子橋堆積場に圧送され堆積されている。 - 使用済堆積場の緑化事業
古河機械金属(株)は、既に使用が完了した13堆積場について、土砂流出等による公害の未然防止を図るため緑化事業を実施することとなっており、ほとんどの堆積場で緑化事業が完了したが、有越沢堆積場の一部については十分な効果が上がっていない。このため、県では引き続き緑化事業の継続について協議している。 - 坑廃水等の水質に関する協定値等
坑廃水等の水質については、pH、銅、亜鉛、カドミウム、鉛、ひ素について協定値を定めている。亜鉛、カドミウム、鉛、ひ素については「水質汚濁防止法」に基づく規制基準の7/10の値を協定値としている。なお、鉛及びひ素の協定値については、9年2月の「水質汚濁防止法」の規制基準の改正後、その取扱いについて検討され、19年3月に三者の協議において見直しが行われた。
県では、協定に基づき、毎月1回4か所の排水口で水質測定を実施しており、古河機械金属(株)でも毎日(亜鉛、鉛、カドミウムは週1回)実施している。なお、測定結果については、すべて協定値を下回っていた。
- 坑廃水処理対策
- (イ)渡良瀬川上流域水質監視
- 渡良瀬川上流域における公害の未然防止を図るため、県では、次の地点において水質の監視を実施している。なお、測定結果については、年平均で環境基準値を下回っていた。
イ 坑廃水処理補助金
- 休廃止鉱山の坑道等の使用済特定施設から流出する坑廃水を処理するための鉱害防止事業が足尾鉱山(日光市)及び小百鉱山(日光市)の2鉱山において実施されている。
事業者は、足尾鉱山については古河機械金属(株)、小百鉱山については(財)資源環境センター(10年度に同和鉱業(株)から業務が移管)である。
坑廃水処理経費のうち自己汚染分を除く自然汚染分及び他者汚染分については、原因者不存在分として「休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金交付要綱」等に基づき、昭和56年度以降、上記2事業者に対して国と県が補助金を交付している。
図2−1−29 渡良瀬川のかんがい期平均値の推移(銅)
表2−1−30 渡良瀬川上流平面図(鉱山地域)
(6) 広域水質保全対策
- ア 関東地方知事会環境対策推進本部水環境部会
- 関東近県10都県の環境部局で構成し、水環境対策に共同して取り組むことを目的としている。19年度は、情報交換、湖の水質浄化に関する研修会等を行った。
- イ 関東地方水質汚濁対策連絡協議会
- 国土交通省、関東地方8都県4政令市の環境、河川、下水道部局及び(独)水資源機構で構成し、毎年、当面する水質保全に係る問題や異常水質発生時の各機関の対応等について協議している。
- ウ 全国湖沼環境保全対策推進協議会
- 湖沼の水質保全については、河川とは異なり閉鎖性で水が滞留するという性質から対策が難しい部分があり、協議会を通じて各都道府県と情報交換をし、協調を図りながら対策の推進を図っている。
- エ 清流ルネッサンスII渡良瀬川上流部支川地域協議会
- 国土交通省、栃木県、足利市及び地域住民代表者で構成し、水質汚濁の著しい矢場川、蓮台寺川及び袋川の水質改善を図るため、各種施策の検討及び推進を図ってきた。
14年度に設立した清流ルネッサンスII渡良瀬川上流部支川地域協議会において、18年3月に第2期水環境改善緊急行動計画(清流ルネッサンスII)を策定し、更なる水質改善に向けての取組を行っている。 - オ 霞ヶ浦関連水域の水質保全
- 茨城県の霞ヶ浦の流域は、茨城県、千葉県及び栃木県(益子町の一部3km2)にまたがっている。
霞ヶ浦の水質保全を図るため、「湖沼水質保全特別措置法」に基づき、3県が昭和61、3、8、13年度に「霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画」を策定し、各種の水質浄化対策を実施してきた。
しかし、水質目標の達成には至らなかったため、18年度に「第5期湖沼水質保全計画」を策定し、引き続き霞ヶ浦の水質浄化対策を推進することとした。
なお、14年度に「湖沼水質保全特別措置法」の一部改正を受けて「湖沼水質保全特別措置法に基づく指定施設等の構造及び使用の方法に関する基準を定める条例」を制定した。また、18年度の同法の一部改正により、湖沼水質基本方針が変更されている。