第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第1章 環境への負荷の少ない循環型の社会づくり

第1節 大気環境の保全

1 大気環境の状況

(1)環境基準

大気の汚染に係る環境基準は、「環境基本法」により、人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準として、二酸化硫黄二酸化窒素一酸化炭素光化学オキシダント浮遊粒子状物質ベンゼントリクロロエチレンテトラクロロエチレンジクロロメタンの9物質について定められている。(表2−1−1)
 また、12年1月に施行された「ダイオキシン類対策特別措置法」により、ダイオキシン類について環境基準が定められている。
 このほか、炭化水素については、光化学オキシダント環境基準を達成するため、濃度指針が定められている。また、有害大気汚染物質のうち、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀、ニッケル化合物、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン及び1,3-ブタジエンの7物質について、健康リスクの低減を図るための指針値が定められている。(表2−1−2)

表2−1−1 大気汚染に係る環境基準
物質 環境上の条件 備考
二酸化硫黄 1時間値の1日平均値が0.04ppm以下であり、かつ、1時間値が0.10ppm以下であること 環境基準
二酸化窒素 1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること
一酸化炭素 1時間値の1日平均値が10ppm以下であり、かつ、1時間値の8時間平均値が20ppm以下であること
光化学オキシダント 1時間値が0.06ppm以下であること
浮遊粒子状物質 1時間値の1日平均値が0.10mg/m3以下であり、かつ、1時間値が0.20mg/m3以下であること。
ベンゼン 1年平均値が0.003mg/m3以下であること。
トリクロロエチレン 1年平均値が0.2mg/m3以下であること。
テトラクロロエチレン 1年平均値が0.2mg/m3以下であること。
ジクロロメタン 1年平均値が0.15mg/m3以下であること。

(注)ダイオキシン類に係る環境基準については、第5節 表2−1−43に示す。


表2−1−2 大気汚染に係る指針値等
物質 環境上の条件

備考

炭化水素 午前6時から9時までの非メタン炭化水素の3時間平均値が0.20ppmCから0.31ppmCまでの範囲内又はそれ以下であること。 濃度指針
アクリロニトリル 1年平均値が2μg/m3以下であること。 指針値
塩化ビニルモノマー 1年平均値が10μg/m3以下であること。
水銀 1年平均値が0.04μgHg/m3以下であること。
ニッケル化合物 1年平均値が0.025μgNi/m3以下であること。
クロロホルム 1年平均値が18μg/m3以下であること。
1,2−ジクロロエタン 1年平均値が1.6μg/m3以下であること。
1,3-ブタジエン 1年平均値が2.5μg/m3以下であること。


(2)大気汚染常時監視体制

本県では、「大気汚染防止法」に基づき、36か所の測定局において、大気汚染の状況を監視している。私たちの身のまわりの大気環境を測定する「一般環境測定局」が25局、自動車の排出ガスの影響を測定する「自動車排出ガス測定局」が11局整備されており、測定は、県が27局(一般環境18局、自動車排出ガス9局)、宇都宮市が9局(一般環境7局、自動車排出ガス2局)で行っている。(図2−1−1、表2−1−3)
 これらの測定局で、二酸化硫黄二酸化窒素一酸化炭素光化学オキシダント浮遊粒子状物質炭化水素などを測定し、その測定データは大気環境情報システムにより県保健環境センター内の大気汚染監視室で集中監視しており、大気汚染状況をリアルタイムで把握し、光化学スモッグ注意報の発令等、緊急時の対策を迅速に行っている。
 また、県のホームページ「とちぎの青空」で常時情報提供を行うとともに、電話応答装置による光化学スモッグ情報の提供を実施している。
 さらに、19年度には、県民の携帯電話に光化学スモッグ注意報等の情報をメール配信する防災メール提供システムを整備した。

図2−1−1 大気汚染常時監視網


表2−1−3 大気汚染監視体制                          (20年3月31日現在)
測定項目/
市町(測定局)


































湿




測定項目/
市町(測定局)


































湿




栃木県設置の一般環境測定局 栃木県設置の自動車排出ガス測定局
足利市       足利市          
栃木市           栃木市          
佐野市(佐野)         佐野市(佐野)              
佐野市(葛生)             鹿沼市              
鹿沼市       日光市(今市)              
日光市(日光)             小山市          
日光市(今市)       真岡市              
日光市(藤原)           矢板市          
小山市   上三川町              
真岡市     小計
大田原市           宇都宮市設置の一般環境測定局
矢板市           中央    
那須塩原市   泉ヶ丘小学校              
那須塩原市       雀宮中学校      
上三川町           瑞穂野北小学校              
益子町             細谷小学校              
野木町           清原            
那珂川町             河内      
小計 14 17 18 18 小計
  宇都宮市設置の自動車排出ガス測定局
大通り        
平出        
小計
合計 13 29 20 36 11 25 10

(3)大気汚染の現状

19年度は、二酸化硫黄二酸化窒素及び一酸化炭素について、すべての測定局で環境基準を達成した。浮遊粒子状物質は、長期的評価ではすべての測定局で環境基準を達成したものの、短期的評価による達成率は31%であった。また、光化学オキシダントについては、すべての測定局で環境基準を達成していない。(表2−1−4)

表2−1−4 大気汚染に係る環境基準達成状況
測定項目 評価方法 区分 19年度 18年度
一般局 自排局 一般局 自排局
二酸化硫黄(SO2 長期的評価 達成局数/有効測定局数 11/11 2/2 11/11 2/2
達成率 (%) 100 100 100 100
短期的評価 達成局数/有効測定局数 11/11 2/2 11/11 2/2
達成率 (%) 100 100 100 100
二酸化窒素(NO2 長期的評価 達成局数/有効測定局数 18/18 11/11 18/18 11/11
達成率 (%) 100 100 100 100
一酸化炭素(CO) 長期的評価 達成局数/有効測定局数 2/2 6/6 2/2 6/6
達成率 (%) 100 100 100 100
短期的評価 達成局数/有効測定局数 2/2 6/6 2/2 6/6
達成率 (%) 100 100 100 100
光化学オキシダントX 短期的評価 達成局数/有効測定局数 0/20 0/20
達成率 (%) 0 0
浮遊粒子状物質(SPM) 長期的評価 達成局数/有効測定局数 25/25 11/11 25/25 11/11
達成率 (%) 100 100 100 100
短期的評価 達成局数/有効測定局数 9/25 2/11 19/25 5/11
達成率 (%) 36.0 18.2 76.0 45.5
(注)1 長期的評価とは、年間にわたる測定結果を長期的に観察した上で評価する方法をいう。
   2 短期的評価とは、連続して、又は随時に行った測定結果により、測定を行った日又は
     時間について評価する方法をいう。
   3 有効測定局とは、測定時間が6,000時間以上の測定局をいう。
   4 一般局とは一般環境測定局、自排局とは自動車排出ガス測定局をいう。

ア 二酸化硫黄(SO2
(ア)一般環境測定局
 二酸化硫黄は、11測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の年平均値が0.001ppmであり、長期的に減少傾向にある。(図2−1−2)
 環境基準は、すべての測定局で達成している。
 燃料の低硫黄化や工場指導等により、工場・事業場からの汚染物質の排出量は着実に削減が図られているものと考えられる。
(イ)自動車排出ガス測定局
 二酸化硫黄は、18年度から2測定局で測定を開始した。19年度は2測定局の年平均値が0.001ppmであった。
 環境基準は、すべての測定局で達成している。

図2−1−2 二酸化硫黄濃度の推移(一般局:年平均値・2%除外値

環境基準:日平均値0.04ppm以下

イ 二酸化窒素(NO2
(ア)一般環境測定局
 二酸化窒素は、18測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の年平均値が0.013ppmであり、ほぼ横ばいの傾向にある。(図2−1−3)環境基準は、すべての測定局で達成している。
(イ)自動車排出ガス測定局
二酸化窒素は、11測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の年平均値が0.023ppmで、近年減少傾向にある。(図2−1−4)環境基準は、すべての測定局で達成している。

図2−1−3 二酸化窒素濃度の推移(一般局:年平均値・98%値

環境基準:日平均値0.04ppmから0.06ppmまでの範囲内またはそれ以下


図2−1−4 二酸化窒素濃度の推移(自排局:年平均値・98%値

環境基準:日平均値0.04ppmから0.06ppmまでの範囲内またはそれ以下

ウ 一酸化炭素(CO)
(ア)一般環境測定局
 一酸化炭素は、2測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の年平均値が0.3ppmであり、長期的に減少傾向にある。(図2−1−5)
 環境基準は、すべての測定局で達成している。
(イ)自動車排出ガス測定局
 一酸化炭素は、6測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の年平均値が0.5ppmであり、自動車排出ガス規制の強化に伴い、長期的には減少傾向にある。(図2−1−5)
 環境基準は、すべての測定局で達成している。

図2−1−5 一酸化炭素濃度の推移(一般局及び自排局:年平均値)

環境基準:日平均値10ppm以下であり、かつ1時間値の8時間平均値が20ppm 以下

エ 光化学オキシダントX

光化学オキシダントは、一般環境測定局20測定局で常時監視を実施している。19年度は、昼間(5〜20時)の1時間値の年平均値が0.032ppmであり、若干増加傾向にある。(図2−1−6)
 光化学オキシダント環境基準達成率は、全国的にも低い状況であり、本県ではすべての測定局で環境基準を達成していない。光化学オキシダントは、窒素酸化物揮発性有機化合物(VOC)などが紫外線の作用を受けて生成するもので、日射が強く、気温が高く、風が弱いなどの気象条件が重なった場合に高濃度になりやすい。また、光化学オキシダントなどにより空が霞んだような状態になったものを光化学スモッグと呼んでおり、目の刺激、のどの痛み、胸苦しさなどの健康被害を伴う。
 県では、光化学スモッグ発生予報及び発令業務を、毎年4月1日から9月30日までの183日間実施しているが、19年度は、注意報を16日発令した。(図2−1−7)
 地域別発令状況は、県南西部が12日、県南部が13日、県南東部が4日、県中央部が8日、県東部が0日、県北西部が1日、県北東部が1日であった。
 19年度は県南部で健康被害があり、7月25日に屋外で野球の練習をしていた児童21名が目やのどが痛かった、息苦しかったとの症状を訴えた。

図2−1−6 光化学オキシダント濃度の推移(昼間の1時間値の年平均値)

環境基準:1時間値0.06ppm 以下


図2−1−7 光化学スモッグ注意報発令日数の推移

オ 浮遊粒子状物質(SPM)
(ア) 一般環境測定局
浮遊粒子状物質は、25測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の年平均値が0.024mg/m3であり、近年緩やかな減少傾向にある。(図2−1−8)
環境基準は、長期的評価では25測定局すべてで達成し、短期的評価では9測定局で達成している。(図2−1−9)
(イ)自動車排出ガス測定局
 浮遊粒子状物質は、11測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の年平均値が0.029mg/m3であり、近年緩やかな減少傾向にある。(図2−1−10)
 環境基準は、長期的評価では11測定局すべてで達成し、短期的評価では2測定局で達成しており、近年改善傾向にある。

図2−1−8 浮遊粒子状物質濃度の推移(一般局:年平均値・2%除外値

環境基準:日平均値 0.10mg/m3以下であり、かつ1時間値が0.2mg/m3以下


図2−1−9 浮遊粒子状物質環境基準達成状況(一般局:長期的評価)


図2−1−10 浮遊粒子状物質濃度の推移(自排局:年平均値・2%除外値

環境基準:日平均値 0.10mg/m3以下であり、かつ1時間値が0.2mg/m3以下

カ 炭化水素
(ア)一般環境測定局
 炭化水素の濃度指針項目である非メタン炭化水素については、5測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の6〜9時における年平均値が0.18ppmCであり、近年ほぼ横ばい状況にある。(図2−1−11)
 1測定局で、光化学オキシダント環境基準を達成するための目標値として定められている濃度指針を達成した。
(イ)自動車排出ガス測定局
 非メタン炭化水素は、6測定局で常時監視を実施している。19年度は、全測定局の6時から9時における年平均値が0.21ppmCであり、減少傾向にある。(図2−1−11)
 1測定局で、光化学オキシダント環境基準を達成するための目標値として定められている濃度指針を達成した。

図2−1−11 非メタン炭化水素濃度の推移(一般局及び自排局:6〜9時における年平均値)
濃度指針:午前6時から9時までの3時間平均値が0.20ppmCから0.31ppmCまでの範囲内又はそれ以下

キ 有害大気汚染物質

有害大気汚染物質に該当する可能性がある234物質のなかで、健康リスクが高いと考えられる優先取組物質22物質のうち、測定方法の確立されているベンゼン等19物質(ダイオキシン類は別途実施)について、「大気汚染防止法」の規定に基づき、環境省が一般環境1地点(足利市)、県が一般環境2地点(大田原市、栃木市)、固定発生源周辺(工業団地周辺)2地点(真岡市、佐野市)、沿道1地点(小山市)、宇都宮市が一般環境及び固定発生源周辺各1地点の合計8地点(一般環境4地点、固定発生源周辺3地点、沿道1地点)で、月1回24時間の採取により、年間を通じてモニタリング調査を実施している。19年度の調査結果は、表2−1−5のとおりであり、環境基準又は指針値が設定されている11物質のうちベンゼンを除く10物質は、環境基準又は指針値を大幅に下回る値であった。沿道におけるベンゼンは、16年度以降環境基準を達成していることから、自動車燃料対策の効果が現れていると考えられる。(図2−1−12)

表2−1−5 有害大気汚染物質の平均値(19年度)
物質名 一般環境 固定発生源周辺 沿道 環境基準・指針値
ベンゼン 0.0012mg/m3 0.0012mg/m3 0.0023mg/m3 0.003mg/m3
トリクロロエチレン 0.00080mg/m3 0.00062mg/m3 0.00093mg/m3 0.2mg/m3
テトラクロロエチレン 0.00016mg/m3 0.00013mg/m3 0.00013mg/m3 0.2mg/m3
ジクロロメタン 0.0019mg/m3 0.0030mg/m3 0.0028mg/m3 0.15mg/m3
アクリロニトリル 0.049μg/m3 0.065μg/m3 0.15μg/m3 2μg/m3
塩化ビニルモノマー 0.029μg/m3 0.043μg/m3 0.030μg/m3 10μg/m3
水銀及びその化合物 0.0023μg/m3 0.0022μg/m3 0.0019μg/m3 0.04μg/m3
ニッケル化合物 0.0020μg/m3 0.0024μg/m3 0.0023μg/m3 0.025μg/m3
クロロホルム 0.14μg/m3 0.17μg/m3 0.11μg/m3 18μg/m3
1,2-ジクロロエタン 0.078μg/m3 0.19μg/m3 0.072μg/m3 1.6μg/m3
1,3-ブタジエン 0.14μg/m3 0.14μg/m3 0.51μg/m3 2.5μg/m3

図2−1−12 ベンゼン濃度の推移(年平均値)

環境基準:日平均値 0.003mg/m3(3μg/m3)以下

ク 酸性雨

欧州や北米等においては、酸性雨が原因とみられる湖沼の酸性化や森林被害などが広域的に発生し地球規模の環境問題の1つとして注目されている。
  酸性雨は、工場等のばい煙自動車排出ガスに含まれる硫黄酸化物窒素酸化物が大気中に放出され、これらが強酸性の硫酸イオンや硝酸イオンに変化し、雨水中に取り込まれて生ずると考えられている。一般にpH5.6以下の雨が酸性雨といわれている。(図2−1−13)
  酸性雨調査については、酸性雨自動測定装置による降水量0.5mmごとのpH、EC(電気伝導度)の常時監視は18年度をもって終了し、19年度からは、新たに1ヶ月単位の湿性沈着量の調査を日光市、宇都宮市及び小山市の3地点で実施している。
 19年度の湿性沈着量の調査結果では、日光市、宇都宮市及び小山市のpHの年平均値が、それぞれ4.9、4.7、4.8であった。酸性雨の原因物質の沈着量は、日光市、宇都宮市、小山市で、硫酸イオンが、3.6、3.9、3.3mmol/m2/月、硝酸イオンが3.0、5.0、4.6mmol/m2/月、塩化物イオンが、1.4、3.2、2.5mmol/m2/月であった。(表2−1−6)
 また、ろ過式採取装置による1ヶ月単位の酸性降下物量の調査は、小山市、佐野市及び日光市での調査は18年度をもって終了し、19年度は、宇都宮市1地点で調査を実施した。
 19年度のろ過式採取装置による調査結果では、宇都宮市のpHの年平均値が4.7であった。(図2−1−14)

図2−1−13 酸性雨発生の仕組み


表2−1−6 湿性沈着量の調査結果
  pH EC SO42- NO3- Cl- NH4+ Na+ K+ Ca2+ Mg2+ H+
μS/cm mmol/m2/月
日光市 4.9 11.9 3.6 3.0 1.4 2.6 2.1 1.6 0.9 0.5 3.4
宇都宮市 4.7 23.0 3.9 5.0 3.2 5.8 4.5 0.2 1.0 0.5 3.2
小山市 4.8 20.7 3.3 4.6 2.5 5.5 3.2 0.2 0.9 0.4 2.5

図2−1−14 ろ過式採取装置による雨のpHの推移

ケ 佐野市葛生地区における降下ばいじん量調査

佐野市葛生地区は、石灰鉱山等の密集地帯で道路沿道の粉じん量が多い地域であるため、継続して降下ばいじん量を測定している。
 19年度は、沿道を中心に3地点で調査を実施した。その結果は年平均値で4.5〜12.1t/km2/月(18年度で4.6〜12.1t/km2/月)であり、長期的に減少傾向にある。(図2−1−15)

図2−1−15 佐野市葛生地区における降下ばいじん量の推移

コ アスベスト調査

アスベスト使用建築材料を使用する建築物の解体等による大気環境中へのアスベスト飛散が懸念されることから、19年度は、県において、一般環境3地域6地点(大田原市、宇都宮市、小山市)、沿道1地域2地点(小山市)のモニタリング調査を実施しており、また、宇都宮市において、一般環境7地点で3日間の採取によりモニタリング調査を実施した。
 その結果、全地点において、大気中のアスベスト濃度は1本/ℓ未満であり、大気汚染防止法で規定する特定粉じん発生施設に係る隣地との敷地境界基準10本/ℓに比べ、相当程度低い値であった。

サ 環境放射能水準調査

環境における空間放射線の変動状況・放射性物質の蓄積状況を把握するため、昭和62年度から文部科学省(旧科学技術庁)の委託を受け、空間放射線量率測定等の環境放射能水準調査を実施している。
 19年度の測定結果は年間平均値39nGy/hであり、公表されている直近の全国の年間平均値(17年度:41nGy/h)と比較し、ほぼ同水準であった。


2 大気環境保全対策

(1)自動車排出ガス対策の推進

ア 自動車排出ガス対策
(ア)自動車排出ガス対策
 自動車排出ガス対策は、国においてディーゼル車の排出ガス対策を中心に「大気汚染防止法」や「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx・PM法)」により、逐次規制の強化が図られている。
 県では、自動車排出ガスによる影響を把握するため、11局(うち2局は宇都宮市設置)の自動車排出ガス測定局で、大気汚染の常時監視を行っている。
 なお、これまで県においては自動車排出ガス測定局を計画的に増設してきており、宇都宮市においても17年度に1局増設している。また、窒素酸化物浮遊粒子状物質の測定を全自動車排出ガス測定局で行う等監視体制の充実強化を図っている。
 さらに、自動車排出ガスの排出抑制を図るため、「エコドライブ」(環境に配慮した自動車の使用)や「アイドリングストップ」(駐停車中の自動車の不必要なエンジン使用の中止)を推進している。
 また、エコドライブについては、11月の「エコドライブ推進月間」に併せて、講習会やキャンペーンを開催した。アイドリングストップについては、「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に努力規定を設け、県庁舎駐車場における看板設置やポスター等による県民への啓発活動の展開、運輸関係業界や大規模駐車場の設置者への呼び掛けを行っている。
(イ)ディーゼル自動車粒子状物質減少装置装着の促進
 埼玉県、東京都、千葉県及び神奈川県の一都三県において、各都県の条例に基づき、15年10月から、排出基準を満たさないディーゼル自動車の通行が禁止されている。本県では、15、16年度の2ヶ年間、県内に登録されている2,436台の大型ディーゼル自動車に対し、粒子状物質減少装置の装着費用の一部を補助した。
 また、大型ディーゼル自動車にDPF(ディーゼル微粒子除去装置)等の粒子状物質減少装置の装着を促進するため、14年度から環境保全資金の融資対象にDPF等の粒子状物質減少装置を加え、大気環境の保全を図っている。
(ウ)低公害車の普及促進
 電気自動車、天然ガス自動車等の低公害車の導入は、自動車走行に起因する大気汚染(NOx、黒煙等)や騒音の改善、二酸化炭素(CO2削減等に対し、極めて有効である。県では、県民への啓発活動を行うとともに、奥日光でハイブリッドバス3台(17年度1台更新)を運行している。
 また、公用車に天然ガス自動車やハイブリッド自動車(いわゆる「クリーンエネルギー自動車」)を導入していくこととしており、19年度は、ハイブリッド自動車4台、天然ガス自動車1台を導入した(19年度末現在、ハイブリッド自動車76台、天然ガス自動車3台を保有)
イ 自動車交通対策
 体系的な道路ネットワークの整備や道路の拡幅、バイパスの整備、交差点の立体化等を推進し、交通渋滞の解消、緩和による大気汚染物質の排出抑制を行っている。
ウ 公共交通機関の利用促進
 本県は、自動車普及率や自動車免許保有率が全国上位にあるなど、「くるま社会」化が顕在化しており、県民の日常生活は自家用車に依存する傾向がますます強まる一方で、公共交通の利用者は減少に歯止めがかからない状況にある。この状況を改善するため、以下の取組を進めている。
(ア)とちぎ公共交通ネットワーク形成基本指針の策定
 本県の公共交通の活性化に向け、行政・交通事業者・住民等が連携しながら取り組むべき方向を示した「とちぎ公共交通ネットワーク形成基本指針」を策定した。
(イ) 子供向け副読本の作成
 バスや電車の乗り方や公共交通の役割等を記載した子供向けの副読本を作成し、子供に対して公共交通に関する啓発を行い、併せてバスの無料乗車券等を添付して、親子そろっての利用促進を図っている。
(ウ)バス・鉄道利用デーの取組
 毎月1日と15日を「バス・鉄道利用デー」と定め、通勤等で日常的に自家用車を利用している県民に対し、ラジオスポットによる呼びかけを行い、バスや鉄道等の公共交通機関の利用促進を図っている。
(エ)新交通システムの導入検討
 19年度からは、宇都宮市が主体となり、宇都宮地域における新交通システムの成立性・実現性について、技術的かつ専門的な観点から検討に着手したところであり、県もこの取組を積極的に支援している。

(2)広域大気汚染対策の推進

ア 光化学スモッグ

県では、光化学スモッグによる被害を未然に防止するため、「栃木県光化学スモッグ対策要綱」を策 定し、関係する市町、行政機関、報道機関及び緊急時協力工場等に光化学スモッグ予報を通報している。
 また、緊急時には、注意報等を発令し、市町への通報、ホームページ「とちぎの青空」等により県民への情報提供を行うとともに、ばい煙排出量の削減や揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制を要請し、被害の未然防止に努めている。(表2−1−7、2−1−8) さらに、19年度には、県民の携帯電話に光化学スモッグ情報を配信する防災メール提供システムの整 備を行った。
 光化学スモッグの発令業務は、大気環境情報システムにより収集した光化学オキシダント濃度等と気象に関する専門機関から提供される発生予測気象情報及び環境省の大気汚染物質広域監視システムから得られる関東地区の広域的な情報を把握し、総合的に解析することで行っている。

表2−1−7 光化学スモッグ発令地域区分(20年3月31日現在)
地域名 市町数 市町名
県中央部 2市2町 宇都宮市、鹿沼市、芳賀町、高根沢町
県南部 3市8町 栃木市、小山市、下野市、上三川町、西方町、壬生町、野木町、大平町、藤岡町、岩舟町、都賀町
県南西部 2市 足利市、佐野市
県南東部 1市2町 真岡市、二宮町、益子町
県北東部 3市2町 矢板市、那須塩原市、さくら市、塩谷町、那須町
県北西部 1市 日光市
県東部 2市3町 大田原市、那須烏山市、茂木町、市貝町、那珂川町

表2−1−8 光化学スモッグ緊急時の発令及び解除の基準
区分 発令の基準 解除の基準
注意報 一の測定地点において、オキシダント測定値が0.12ppm以上になり、かつ、この状態が気象条件からみて継続すると認められるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシダント測定値が0.12ppm未満になり、かつ、気象条件からみてその状態が悪化するおそれがなくなったと認められるとき。
警報 一の測定地点において、オキシダント測定値が0.24ppm以上になり、かつ、この状態が気象条件からみて継続すると認められるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシダント測定値が0.24ppm未満になり、かつ、気象条件からみてその状態が悪化するおそれがなくなったと認められるとき。
重大緊急報 一の測定地点において、オキシダント測定値が0.40ppm以上になり、かつ、この状態が気象条件からみて継続すると認められるとき。 発令地域内の測定地点において、オキシダント測定値が0.40ppm未満になり、かつ、気象条件からみてその状態が悪化するおそれがなくなったと認められるとき。
イ 酸性雨
 本県では、ろ過式採取装置により酸性降下物量の調査を1地点で、湿性沈着量調査(19年度から開始)を3地点で実施している。
 また、酸性雨は広域的な汚染でもあることから、中長期的な影響の把握のための「酸性雨長期モニタリング」(国からの委託事業)を継続して実施しており、また、関係都県との共同調査(関東地方環境対策推進本部の酸性雨共同調査)については、平成18年度まで調査・研究等に継続参加し、平成19年度に報告を取りまとめたところである。
ウ スターウォッチング・ネットワーク
 一人ひとりが身近な大気の状況を把握し、大気保全の重要性や自然観察についての興味と関心を深めることを目的として、昭和62年度から環境省の主催で実施されている。
 19年度は、肉眼による「天の川」の観察、双眼鏡による夏期及び冬期の代表的な星座である「こと座」及び「すばる星団(プレアデス星団)」が、どの等級の星まで見えるかの観察等がなされ、本県では、4市2町の7団体延べ52名が参加した。

(3)有害大気汚染物質対策の推進

ア モニタリング調査

有害大気汚染物質に該当する可能性がある234物質のなかで健康リスクが高いと考えられる優先取組物 質22物質のうち、測定方法の確立されている19物質(ダイオキシン類については別途モニタリング調査を実施。)について、「大気汚染防止法」の規定に基づき、一般環境4地点、固定発生源周辺(工業団地周辺)3地点、沿道1地点の合計8地点で、月1回24時間の採取によるモニタリング調査を実施している。

イ アスベスト対策

アスベスト使用建築材料の解体の増加等に伴い、大気環境中へ排出されるアスベストの増加が懸念さ れることから、17年度からモニタリング調査を実施している。19年度は、県においては一般環境3地域6地点、沿道1地域2地点で、また、宇都宮市においては一般環境7地点で、3日間の採取によりモニタリング調査を実施している。
 また、17年度末に創設された、アスベスト改修型優良建築物等整備事業(国庫補助事業)の活用により、建築物に吹き付けられたアスベストの除去等を進めている。
 アスベスト含有率が0.1%を超える県有施設について、「吹付けアスベスト使用施設における対応方針」に基づき、計画的に飛散防止対策を推進している。


(4)工場・事業場対策の推進

大気環境の保全を図るため、「大気汚染防止法」及び「栃木県生活環境の保全等に関する条例」に基づき、ばい煙発生施設等を設置する工場・事業場への立入検査を実施している。
 また、「工場・事業場ばい煙VOC・指定物質等自主管理要領」に基づき、ばい煙量等の自主測定や結果報告を求めることなどにより、施設の適切な維持管理を図るよう指導している。

ア 規制基準
 本県では、「大気汚染防止法」に基づく一律排出基準に加えて、同法第4条第1項の規定に基づき、有害物質塩素及び塩化水素ふっ素ふっ化水素及びふっ化けい素)について、より厳しい上乗せ排出基準を定めている。
 「栃木県生活環境の保全等に関する条例」では、4種類のばい煙に係る特定施設を定め、排出基準を設定している。粉じんについては、3種類の特定施設を定め、施設の管理基準を規定している。
イ ばい煙関係施設、揮発性有機化合物(VOC)排出施設及び粉じん関係施設の届出状況
法及び条例に基づくばい煙VOC及び粉じん関係施設の届出状況は、表2−1−9、表2−1−10、表2−1−11のとおりとなっている。
表2−1−9 ばい煙関係施設等届出状況(20年3月31日現在)
 (1)大気汚染防止法  (2)栃木県生活環境の保全等に関する条例
ばい煙発生施設 施設数(件)
宇都宮市
ボイラー 2,807 711 3,518
溶解炉 214 16 230
金属加熱炉 200 36 236
焼成炉及び溶融炉 29 2 31
乾燥炉 156 23 179
廃棄物焼却炉 115 19 134
その他の産業炉 156 18 174
施設合計 3,677 825 4,502
届出工場・事業場数 1,444 301 1,745
ばい煙に係る特定施設 施設数(件)
宇都宮市
亜鉛又はアルミニウムの第二次精錬の用に供する溶解炉 25 0 25
金属製品の製造の用に供する表面処理施設及び酸洗施設 3 0 3
その他 1 0 1
施設合計 29 0 29
届出工場・事業場数 7 0 7
※大気汚染防止法等の公害関係法令では、県知事の権限に属する事務について、政令などで委任された市長が行うことになっているため、県所管分と宇都宮市所管分で分けて記載している。

表2−1−10 揮発性有機化合物(VOC)排出施設届出状況(20年3月31日現在)
 (1)大気汚染防止法
VOC排出施設 施設数(件)
宇都宮市 合計
化学製品の製造の用に供する乾燥施設 0 0 0
吹付塗装施設 36 3 39
塗装の用に供する乾燥施設 11 5 16
粘着テープ等の製造に係る接着用に供する乾燥施設 33 20 53
接着の用に供する乾燥施設 9 2 11
オフセット輪転印刷の用に供する乾燥施設 7 4 11
グラビア印刷の用に供する乾燥施設 7 0 7
工業の用に供する洗浄施設 14 0 14
貯蔵タンク 1 0 1
施設合計 118 34 152
届出工場・事業場数 41 7 48

表2−1−11 粉じん関係施設等届出状況(20年3月31日現在)
 (1)大気汚染防止法(一般粉じん  (2)大気汚染防止法(特定粉じん排出等作業件数)
一般粉じん発生施設 施設数(件)
宇都宮市
コークス炉 2 0 2
堆積場 235 16 251
コンベア 772 18 790
破砕機・摩砕機 333 12 345
ふるい 138 1 139
施設合計 1,480 47 1,527
届出工場・事業場数 405 16 421
年度 作業件数
宇都宮市
14 12 1 13
15 6 7 13
16 9 5 14
17 95 28 123
18 171 53 224
19 105 31 136

(3)栃木県生活環境の保全等に関する条例
粉じんに係る特定施設 施設数(件)
宇都宮市
飼料又は有機肥料の用に供する粉砕施設及びふるい 38 0 38
窯業土石又は鉱物の用に供する施設 216 39 255
活性炭又は炭素製品の用に供する施設 14 2 16
施設合計 268 41 309
届出工場・事業場数 103 12 115

ウ 立入検査状況

19年度は、延べ399工場等について立入検査を実施した。(表2−1−12)立入検査した工場等のうち、112工場等に是正指導し、その主な内容は、届出の不備47件(42.0%)、自主分析の実施18件(16.1%)、排出基準・管理基準の遵守16件(14.3%)であった。(表2−1−13)

表2−1−12 立入検査実施数
区分 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
ばい煙関係の施設を設置する工場・事業場 320 333 307 318 303
VOC排出施設を設置する工場・事業場 45 55
粉じん関係の施設を設置する工場・事業場 11 13 19 23 41
合計 331 346 326 386 399
(注) 1 ばい煙関係の立入検査実施数は、県分292件、宇都宮市分11件
   2 VOC排出施設の立入検査実施件数は、県分55件、宇都宮市0件 *18年度から届出・立入開始
   3 粉じん関係の立入検査実施数は、県分9件、宇都宮市分32件

表2−1−13 立入検査指導内容(19年度)
指導事項 工場・事業場数(件)
県実施 宇都宮市実施 合計
是正指導した工場・事業場数 110(82) 2(0) 112(96)




排出基準・管理基準の遵守 15(3) 1(0) 16(3)
自主分析の実施 18(25) 0(0) 18(25)
届出の不備 47(28) 0(0) 47(28)
施設等の点検・管理 5(6) 0(0) 5(6)
処理施設等の設置・改善 4(4) 0(0) 4(4)
管理組織体制 12(5) 0(0) 12(5)
記録の整備 2(5) 1(0) 3(5)
その他 7(7) 0(0) 7(7)
(注)( )内数値は、18年度実績値
エ アスベスト対策

元年12月に「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が施行され、アスベストが「特定粉じん」として規制を受けたことに伴い、関係事業場の指導に努めている。
 また、9年4月に吹付け石綿が使用されている建物の解体等作業が「特定粉じん排出等作業」として規定されたことに伴い、この解体等作業についても規制・指導を実施している。
 さらに、18年3月に大気汚染防止法施行令が改正され、従来は規制の対象外であった「石綿を含有する保温材、断熱材及び耐火被覆材」を使用した建築物の解体等作業が規制対象に追加されている。18年10月には大気汚染防止法等が改正され、従前の建築物以外に「石綿が使用されている工作物」についても規制対象に追加されている。
 なお、17年度から、融資制度(栃木県環境保全資金)の対象に、吹付け石綿の除去等に係る経費を加えている。

オ 佐野市葛生地区における粉じん対策

佐野市葛生地区は、日本有数の石灰鉱山等の密集地域であり、特に沿道の粉じん量が多いため、降下ばいじんのモニタリング調査を年間を通じ3地点で実施するとともに、事業場等に対する指導等を行っている。


(5)スパイクタイヤ装着に伴う道路粉じん対策

「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」に基づき、3年5月に宇都宮市以北の17市町がスパイクタイヤ使用禁止地域として指定され、5年2月に日光市が追加指定された。
 なお、指定地域の範囲は当時のままであり、19年度末現在で11市町の区域が指定されている。(表2−1−14)

表2−1−14 スパイクタイヤ使用禁止地域(19年度末現在)
7市 宇都宮市(旧宇都宮市、旧河内町及び旧上河内町)、鹿沼市(旧鹿沼市の区域に限り、旧栗野町の区域を除く。)、日光市(旧日光市及び旧今市市の区域に限り、旧足尾町、旧栗山村及び旧藤原町の区域を除く。)、大田原市(旧大田原市の区域に限り、旧黒羽町及び旧湯津上村の区域を除く。)、矢板市、那須塩原市(旧黒磯市、旧西那須野町及び旧塩原町)、さくら市(旧氏家町及び旧喜連川町)
  ※旧市町村の区域は、指定時の区域である。
4町 芳賀町、塩谷町、高根沢町、那須町