第2部 環境の状況と保全に関して講じた施策

第5章 共通的基盤的施策の展開

第2節 調査及び研究の実施

1 県保健環境センターにおける調査研究

環境汚染の実態把握と未然防止を図るため、以下の課題について調査研究を行っている。

(1)大気環境関係

ア 有害大気汚染物質モニタリング調査結果の取りまとめ並びに追加物質の分析検討及び調査

16〜18年度有害大気汚染物質モニタリング調査結果を取りまとめるとともに、現在では測定項目ではないが、有害大気汚染物質に該当している物質、もしくは、PRTR指定物質に該当する物質のうち、現有機材でサンプリング・分析が可能なものを選択し、分析手法を検討する。分析が可能と確認された物質について、実態を把握し、今後もモニタリングしていく必要があるかどうかの判断資料を作成する。

イ 酸性雨及び浮遊粒子状物質調査

夏季、冬季に浮遊粒子状物質のサンプリングを道路沿道、一般環境で行った。
 全国環境研究所協議会第4次酸性雨調査に参加し、湿性降下物を採取、分析した。

ウ 大気環境に関する行政依頼検査

大気環境調査として、有害大気汚染物質調査、酸性降下物量調査、降下ばいじん量調査、文部科学省委託による環境や食品・飲料水中の放射能調査を実施した。
 また、前記調査の他、最終処分場悪臭調査、苦情による騒音(低周波騒音を含む)調査を行った。20年度も同様の調査を実施する。


(2)水環境関係

ア 栃木県内の水環境における化学物質に関する調査

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)のうち、本県内において排出量の多い化学物質を中心に河川31地点において調査を実施した。

イ 湯の湖・湯川の泡に関する調査研究

湯の湖及び湯川において泡が見られることから、泡の構成成分や周辺水域の水質調査を実施するとともに、泡の発生原因について検討した。

ウ 湯の湖のコカナダモ調査

湯の湖のコカナダモの繁茂状況をソナー及び水中カメラを活用して調査した。

エ 大どぶ調査

湯の湖(日光市)に流入する水路である大どぶは、汚染負荷がその中下流の暗渠において増えるため、その時間的変動や原因について、調査を行った。

オ 化学物質汚染実態調査

未規制化学物質3物質について、環境省の委託を受けて宇都宮市を流れる田川の水質及び底質を対象に調査を実施した。20年度も引き続き調査を実施する予定である。

カ 酸性雨モニタリング(陸水)調査

酸性雨による中長期の影響を把握するため、刈込湖(日光市)において環境省の委託を受けて湖沼の水質の分析や集水域、気象に関する事項の情報収集等を行った。20年度も引き続き調査を行う予定である。

キ 水環境に関する行政試験検査

工場・事業場排水、ゴルフ場排水及び鉱山排水の水質分析を実施するとともに、河川、湖沼等の公共用水域の水質調査、未規制物質調査、水生生物調査、水道水源の水質調査を実施した。
 また、地下水汚染等、緊急時、異常時の水質分析を行った。20年度も、引き続き水環境に関する水質分析、調査を行う。


(3)廃棄物関係

ア 溶融スラグの有効利用に関する研究

溶融スラグについては、18年度の道路用及びコンクリート骨材としてのJIS化により有効利用が促進されているが、さらにその利用を進めるため、県内で発生する廃棄物溶融スラグ及び下水汚泥スラグを使用し、各種イオン類の吸着特性について検討し水処理剤としての利用可能性ついて研究を行っている。

イ 廃棄物に関する行政試験検査

廃棄物の処理及び清掃に関する法律」「栃木県産業廃棄物処理に関する指導要綱」「栃木県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例」等に基づき、処分場の浸出水・排水、周辺地下水の水質検査及び廃棄物・土壌の溶出検査を行っている。

ウ ダイオキシン類の測定

ダイオキシン類対策特別措置法に基づく焼却施設等の排出ガス、排水の検査及び土壌環境調査、地下水環境調査を実施している。

2 その他の試験研究機関における調査研究

その他の試験研究機関において、19年度に実施した主な環境関連の試験研究は次のとおりである。

(1)林業センターにおける調査研究

ア 花粉の少ないスギ林等の造成に関する研究

スギによる花粉症被害解決のため、花粉の少ないスギ品種による種苗生産法の開発と森林施業による花粉生産量の抑制方法について検討する。

イ 強度間伐による森林整備に関する研究

コスト縮減を図りながら公益的機能を発揮させる森林施業方法を探るため、強度間伐した森林の状況を調査し、複層林や針広混交林への誘導する手法の確立に資する。

ウ ツツジ群落の病害虫被害に関する調査

近年那須町湯本八幡地区のツツジの開花数が減少しており、その原因を究明することにより、県内各地に群生しているツツジ類の維持管理に資する。

エ 地域希少種等の保全に関する研究

シカによる食害で衰退している白根山のシラネアオイ群落の遺伝子保全を目的とした種子保存方法及び葉片培養による増殖技術の開発。さらにDNA解析による群落の多様性や地域固有マーカーにより、群落保全の指標を得る。

オ シカの食害により退行した奥日光森林植生の回復に関する研究

奥日光におけるシカの生息頭数が個体数調整により減少している中、今後の当地域における森林植生の回復について、人為的な手法の有効性を検討しながら、各種環境下における植物種組成の変化について明らかにする。


(2)県民の森管理事務所における調査研究

ア エサ資源としての自然植生の変化がツキノワグマの行動に与える影響に関する研究

クマの人里への出没とエサとなる広葉樹堅果類等の豊凶の関連を検証し、クマの出没を予測する。

イ イノシシ生息密度の把握手法の開発並びに効果的捕獲技術の確立に関する研究

狩猟や有害捕獲の情報の収集から捕獲努力量、発見率等を算出し、生息密度の指標としての有効性を検証する。また、各種猟具による捕獲効率を分析し、効果的な捕獲手法や捕獲時期について検討する。

ウ 野生鳥獣の被害防除技術の確立に関する研究

クマ、シカ等の野生鳥獣による森林等への被害を防止する資材等の効果・耐久性や森林施業方法の工夫による効果等について、調査・研究を行う。

エ 野生鳥獣の病理及び環境汚染の実態解明に関する研究

傷病鳥獣をサンプルとして感染症や化学物質汚染の実態解明を行う。


(3)農業試験場における調査研究

ア 環境負荷低減技術の開発

肥料の過剰施用による環境負荷を防ぐため、適切な施肥量を診断する技術を開発する。

イ 減化学農薬技術の開発

天敵昆虫や有用微生物の利用など、化学農薬以外の技術を活用した病害虫の防除体系を確立する。


(4)畜産試験場及び酪農試験場における調査研究

ア 家畜ふん尿の適正処理と堆肥の利用に関する研究

家畜ふん尿処理施設の適正導入マニュアルを作成するとともに、使いやすく流通に適した堆肥の製造技術を開発する。

イ 悪臭・害虫対策に関する研究

簡易な脱臭システムや、天敵昆虫による環境にやさしい害虫防除システムを開発する。

ウ バイオガスプラントに関する研究

バイオガスプラント有効性・実用性の実証のため、運転状況の評価や消化液の肥料利用技術確立に関する研究を行う。