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更新日:2023年4月1日
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不妊治療には大きく分けて、「一般不妊治療」と「生殖補助医療(ART)」があります。
生殖補助医療とは、配偶子(卵と精子)や受精卵(胚)を体外で取り扱う高度不妊治療のことをいい、こうした技術に頼らない治療法を一般不妊治療といいます。
不妊治療は通常、自然に近い方法からより高度な治療法へと段階的に進んでいきます。
通院や入院などによる時間的拘束、経済的な負担もあり、また治療した方すべてが妊娠に至るわけではないことから、パートナー同士で治療の必要性を納得した上で実施する必要があります。
治療に関してはパートナーとよく話し合い、主治医に希望を伝えることも大切です。
一般不妊治療の主なものとして、性交タイミング指導、薬物治療、手術療法、人工授精があります。
治療は通常、性交タイミング指導から開始し、原因に応じて薬物や手術による治療を行います。
一般的に1つの治療法に費やす期間の目安は約6か月間で、一般不妊治療を約2年間続けても妊娠に至らない場合は、生殖補助医療(ART)へのステップアップを検討します。
●排卵障害 ●高プロラクチン血症 ●多のう胞性卵巣症候群(PCOS) ●黄体機能不全
●頸管粘液分泌不全 ●子宮内膜症や子宮筋腫 ●造精機能障害 ●性機能障害
●子宮筋腫 ●子宮形態異常 ●卵管障害 ●多のう胞性卵巣症候群(PCOS)
卵子が受精できるのは排卵後約24時間、精子に受精能力があるのは射精後48~72時間です。
この期間に精子と卵子が出会えるよう排卵日を知り、性交のタイミングを合わせていきます。
排卵日は、基礎体温表や超音波検査、頸管粘液検査、尿中の黄体化ホルモン(LH)検査などから予測できます。
一般的に、薬物療法などによる治療と並行して、半年から1年間ぐらい行います。
排卵を誘発する作用のあるクロミフェン剤を、月経開始後より3~5日目から5日間内服すると脳の視床下部に働きかけ、約2週間後に排卵が起きます。これを「クロミフェン療法」といいます。
この薬を何周期も連続使用すると頸管粘液の分泌量低下や子宮内膜が厚くならない、というデメリットが生じることもあります。その場合、別の内服薬を検討することもあります。
この療法で妊娠、または排卵に至らない場合、2種類の注射により卵巣を直接刺激する「ゴナドトロピン療法
(hMG-hCG療法)」を行います。
高プロラクチン血症による排卵障害の場合は、プロラクチンの分泌を持続的に抑える薬を内服することで排卵がみられるようになります。
多のう胞性卵巣症候群で肥満を伴う場合には、まず減量に向けた指導が行われます。
治療としてはクロミフェン+hCG療法がありますが、インスリン抵抗性(インスリンの血糖を下げる作用が弱まっている状態)がある場合には、その改善薬(メトフォルミン:保険適用外)を使用する事があります。
これらの治療法で効果が見られない場合、ゴナドトロピン療法が選択されますが、多のう胞性卵巣症候群でこの治療を行うと、卵巣過剰刺激症候群を起こしやすい傾向があり、十分注意する必要があります。
黄体機能不全の原因が卵胞の発育不全によるときには、排卵誘発剤により卵胞の発育を促すとともに黄体ホルモン剤により分泌不足を補います。
子宮頸管粘液分泌不全で卵胞ホルモンの分泌に問題がある場合は卵胞ホルモン剤を投与します。
軽度の子宮内膜症などの場合には、卵胞ホルモンの分泌を抑制する薬を4~6か月投与して月経を止め、病巣を小さくする治療をすることがあります。
原因不明のことも多いため、まずはその機能を高めるためのビタミン剤や漢方薬などを服用します。
効果がみられない場合は男性ホルモン(テストステロン)などのホルモン剤を投与します。
病態に応じた治療が必要となります。勃起障害(ED)に対しては、薬物治療が中心となります。
不妊の原因と考えられる場合は、筋腫そのものだけを手術で取り除きます。
大きさや場所によっては、子宮鏡や腹腔鏡の手術ですみますが、開腹手術になる場合もあります。
子宮形態異常の種類によっては手術の必要がないものや不可能なものもあります。
中隔子宮の場合は、子宮鏡下での子宮形成術が可能です。
顕微鏡を用いた手術(マイクロサージェリー)や腹腔鏡を使った癒着の剥離、卵管鏡を使った卵管形成術などが行われます。
多のう胞性卵巣症候群では、卵巣表面に小さな穴を多数あける事で排卵を回復させる、腹腔鏡下卵巣多孔子術が行われる事があります。
進行した子宮内膜症も手術の対象となります。
腹腔鏡下で行われることも多いですが、重度であれば開腹手術となります。
いくつかの外科療法があり、手術を行うと精液所見が改善する場合があります。
通過障害の部位や病態に応じて顕微鏡下手術や内視鏡手術などがあり、閉塞部分を切除して再びつなぎ合わせると自然妊娠が期待できます。
なお、これらの治療に効果が見られない場合には、最終的に精巣あるいは精巣上体からの精子採取術を行うことを検討します。
人工授精は、自然の排卵や排卵誘発剤を使用しての排卵に合わせ、洗浄・濃縮させた精液を人工的に子宮腔内に注入し、受精を促す方法です。
麻酔の必要はなく、精子を注入後15~30分ほど安静にして終了です。
対象となるのは、精液量・濃度・運動率などが不良の場合、逆行性射精、勃起障害や射精障害、頸管粘液分泌不全、中程度の抗精子抗体陽性、性器の形に問題がある場合、原因不明の機能性不妊などです。
1回の人工授精で妊娠する率は10%前後で、それほど高くはありません。
この方法で妊娠する人は5~6回くらいまでに成功しており、通常は6~7回くらいを上限として考えます。
卵巣から採取した卵子と精子を合わせて体外で受精させる「体外受精」と、顕微鏡下で卵子に精子を注入する「顕微受精」があります。
体外受精は卵子と精子を採取後、体外で受精させ、培養した受精卵を子宮に戻す方法です。
対象となるのは、両側卵管の著しい機能低下があり手術による治療が期待できない場合、高度の男性不妊や免疫性不妊、他の治療法を長期にわたって受けていても妊娠にいたらない場合などです。
一般的に、体外受精は以下の順序で行われます。
自然周期では、多くの場合排卵は1個のみです。
体外受精の場合、1個の卵子では妊娠の可能性が低いため、排卵誘発剤を投与して一度に複数の卵子を育てます。
卵巣刺激の方法には、クロミフェン法、ショート法、ロング法、アンタゴニスト法などがあり、それぞれ身体の状態に適した方法で行われます。
多くの場合、排卵誘発剤を連日注射する事になりますが、最近では通院の負担を減らすため、自己注射を選択できる場合もあります。
卵胞が十分に成熟した段階で、排卵を誘発する薬(多くはhCG製剤)を使い、排卵直前の状態にします。
採卵はhCG投与後35~37時間後くらいに行います。
通常、静脈麻酔や局所麻酔を用いて、経膣超音波で確認しながら、両側卵巣の卵胞を穿刺し、卵子を卵胞液ごと1個ずつ吸引します。
その中から顕微鏡を使って卵子を見つけだして洗浄し、シャーレの中で培養します。採卵後は2~3時間体を安静にします。
採卵した卵子は、運動性の良い精子と培養液の中で一緒にし、受精させます(媒精)。
受精は自然にまかせます。15~20時間くらいで受精し、正常な受精卵はさらに培養を続けると分割を始めて胚になります。
受精卵は、受精後48時間くらいで4~8細胞の胚になります。
その中から質の良いものを選び出し、柔らかく細いカテーテルに入れ子宮内に注入します。
多胎妊娠を避けるために日本産科婦人科学会のガイドラインでは、移植胚数は原則1個とされています。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠に至らなかった場合は2個以内とされています。
移植後は着床を助けるためにhCG製剤やプロゲステロン製剤の注射を行い、2週間後の妊娠判定を待ちます。移植後は普段通りの生活ができます。
良好な胚がたくさんできた場合はこれを凍結保存し、次回の胚移植に使うことができます。
胚盤胞移植は、通常の体外受精-胚移植より受精卵を長く培養し、胚盤胞と呼ばれる着床直前の状態にまで育った胚を移植する方法です。
子宮内環境などの影響で、初期胚を移植してもうまく着床しない人に向く治療法とされています。
凍結胚移植は、培養した胚を凍結したのち、新たな周期でその胚を融解、移植する方法です。
胚の凍結には、採卵周期で胚が余った時に行う余剰胚凍結と、卵巣過剰刺激症候群の可能性がある場合や子宮内膜の状態が移植に適していない場合、黄体機能不全がある場合などに全ての胚を凍結する全胚凍結があります。
顕微受精は、顕微鏡をみながら卵子に精子を人工的に注入して授精させる方法です。
顕微授精の方法の中で主流となっているのが、卵細胞質内精子注入法(ICSI)です。
顕微授精は精子が極端に少なくても受精が可能であることから、重症の男性不妊や精子・卵子の受精能力に問題がある場合などが対象となります。
卵子を体外から取り出す方法や培養、移植は体外受精と同様ですが、運動能力に欠ける精子も利用できるのが体外受精と異なる点です。
治療を受ける際には、十分な説明を受け、リスクも納得した上で受けることが重要です。
排卵誘発剤には、薬自体の作用・副作用に加え、妊娠後の初期流産が多いことや、卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠といった重大な副作用があります。
排卵誘発剤により、卵巣が過剰に刺激されて現れる様々な症状の総称で、卵巣の腫大と血管透過性亢進による腹水の貯留が二大症状になります。
安静だけで改善する場合もありますが、重症の場合には胸水や腹水がたまり、腹痛、呼吸困難、血栓症をおこすなど、入院管理が必要になることもあります。
排卵誘発中に下腹部の不快感や膨満感、下腹部痛があったときにはすぐに医師に伝えましょう。
日本人の双胎(ふたご)率は約1%(100妊娠に1例)ですが、排卵誘発剤を使用するとその発症率は高くなり代表的な治療法であるhMG-hCG療法では約20%との報告もあります。
三胎(みつご)以上の確率も高くなり、三胎以上では双胎よりもさらに早産や死産、低出生体重児の増加がみられます。
母体にも妊娠高血圧症候群、切迫早産、羊水過多等による危険があり、妊娠継続自体が難しくなるケースもあります。
体外受精では、排卵誘発剤の副作用のほか、採卵時の出血や麻酔のトラブルなどが起きる危険性があります。
顕微受精は重症の男性不妊にも妊娠の可能性をもたらしましたが、無精子症や重度な乏精子症は染色体異常や遺伝子異常が原因であることが少なくありません。
顕微授精によって本来なら自然淘汰されるはずの精子が使われれば、子どもに遺伝することも考えられます。
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