
1 水質の環境基準
水質に関する環境基準は、人の健康の保護に関する基準(健康項目)と生活環境の保全に関する基準(生活環境項目)の2種類が定められています。
健康項目は、カドミウムやダイオキシン類など27項目について、すべての公共用水域及び地下水において一律の基準が定められています。
生活環境項目は、それぞれの利水目的に応じ、水域ごとに異なった基準が適用されています。
2 河川水質の現況
15年度は、59河川128地点で水質調査を実施しましたが、健康項目については、すべての地点で基準を達成していました。生活環境項目の1つである生物化学的酸素要求量(BOD)の達成状況は、県全体で92%であり、前年度(86%)より向上しました。
3 湖沼水質の現況
近年、湖沼において植物プランクトンが大量に繁殖し、水質悪化や魚類のへい死を招く富栄養化現象が全国的に問題となっています。これは、湖沼周辺の社会活動から生じる窒素やりんなどの栄養塩類の流入の増加が主な原因です。
県内では、湯の湖が化学的酸素要求量(COD)と全りんについて環境基準を達成していますが、全窒素は環境基準を達成していません。
また、最も厳しい基準が適用されている中禅寺湖では、CODで環境基準を達成していません。
4 地下水水質の現況
県内における地下水質の実態を把握するため、15年度に135地点で概況調査を実施しましたが、硝酸性窒素等で環境基準を超えたところが19地点ありました。
また、過去に地下水汚染の確認されている69地区において定期モニタリング調査を行いましたが、汚染の拡大はみられず、19地区では環境基準以下になりました。

1 栃木県水環境保全計画の策定
本県の良好な水環境を将来にわたって保全していくため、16年3月に「栃木県水環境保全計画」を策定しました。県では、この計画で定められた基本目標の実現に向けて、水環境の保全に関連する施策を総合的かつ体系的に展開していくこととしています。
〔基本目標1〕 きれいで安全な水を確保する
県民の健康やくらしを良好に保持していくため、生活排水対策や工場・事業場対策等により、水環境への汚濁物質負荷量を可能な限り低減させるとともに、有害化学物質等による汚染の防止に努めます。
〔基本目標2〕 豊かな水を育む流域を保全する
節水や循環利用といった水の有効利用を推進するとともに、水源のかん養に重要な役割を果たしている森林、農地等の保全や市街地等における保水機能の向上に努めます。
〔基本目標3〕 生き物が息づく水辺を守り、人々とのふれあいを築く
地域固有の動植物や生態系を保全しながら、人々が水と親しむことができる場所を整備するなど、地域の特性に配慮した水辺づくりに努めます。
〔基本目標4〕 みんなが水環境づくりに参加する体制をつくる
水環境の保全のためには、県民、事業者、民間団体、行政などの参加と協働が必要なことから、県民のみなさんが水環境を学ぶ機会の充実や保全活動に参加できる体制の整備に努めます。
2 生活排水対策
家庭での炊事や洗濯などによる家庭雑排水は、今や河川を汚す最大の原因となっています。県ではこういった生活排水対策を推進するため、市町村と協力して、下水道の整備などを行っています。
下水道の種類には、公共下水道、流域下水道、農業集落排水施設、コミュニティ・プラント、浄化槽などがあり、県では「栃木県生活排水処理構想」を策定し、地域の特性に応じた整備を県内全域で推進しています。
本県におけるこれらの下水道等(広義の下水道)の普及率は15年度末現在で65.8%です。
(1) 公共下水道
主に都市部の下水を処理して川へ流すもので、市町村が建設し、維持管理していますが、流域下水道に接続しているものもあります(流域関連公共下水道)。
本県では、15年度末で47市町村が公共下水道事業を実施しており、このうち42市町村ですでに供用を開始しています。
本県の公共下水道の普及率は、15年度末現在で52.4%です。
(2) 流域下水道
複数の市町村の下水を、一か所の終末処理場で広域的に処理するもので、県が建設・維持管理をしています。
現在、5流域7処理区で事業を実施しており、24市町の下水の処理を行っています。
(3) 農業集落排水施設
農業用用排水の水質保全や農村の生活環境の改善、川や湖の水質改善等を図ることを目的としており、本県では、32市町96地区で施設整備がされています。
なお、農業集落排水施設の処理水は農業用水として利用され、汚泥は肥料化して農地へ還元されるなど、資源のリサイクルが図られています。
(4) 浄化槽
下水道や農業集落排水施設のように終末処理場を設置することが合理的・経済的でない地域において、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を目的として、戸別に設置し、家庭からのし尿や雑排水を一緒に処理する施設です。
県内の全市町村で浄化槽の設置に対する補助が行われており、国・県も支援を行っています。
県内では、15年度に3,861基が補助事業により設置されています。
3 工場等に対する規制と指導
工場などの排水については、「水質汚濁防止法」による全国一律の基準に加えて、県の条例でより厳しい基準を定めて規制を行っています。
また、工場などに対して立入検査を実施するほか、排出水の汚染状態の自主測定や結果の報告を求めるなどにより、排水処理施設等の適切な維持管理が図られるよう指導しています。
4 湖沼水質保全対策
県と日光市は、奥日光の水質保全対策の総合的・計画的な推進のために「奥日光清流清湖保全協議会」を設立し、「奥日光清流清湖保全計画」のもと、湯の湖、湯川、中禅寺湖の水質改善のため、各種対策を実施しています。
なお、15年度は協議会を中心に、中禅寺湖での湖上学習会や機関誌の発行、湯の湖の水草(コカナダモ)除去などの事業を行っています。
市町村別広義の下水道普及率(16年3月31日現在)

※ 広義の下水道とは、公共下水道(流域下水道を含む。)と下水道類似施設(農業集落排水施設、コミュニティ・プラント、合併処理浄化槽等)を指す。
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