自然は、生きるために必要な空気や水、食料などの物質的な恵みのみならず、潤い・快適さなどの精神的な恵みをも与えてくれます。
この自然の恵みを将来にわたって受け続けるためには、私たちも自然生態系の一構成員であるとの自覚を持ち、生態系のバランスを保持していくことが必要です。
県では、本県の優れた自然を保全し、人と自然が共生する潤いのある地域づくりを目指します。

県の北部は、日光・高原・那須火山群からなる山岳地帯で、湖や沼、渓谷、滝などが原生林と調和した自然景観をつくっています。
また、県の中央部や南部の平地帯には、身近な自然である平地林が広がっており、防音、防火、憩いの場として生活環境上大切な役割を果たしています。
県内の森林は、県土の55%を占め、木材生産、水資源のかん養、県土の保全、観光資源などとしての公益的役割を果たしています。
この自然の豊かな県土には、我が国の代表的な自然公園である日光国立公園をはじめ、8つの県立自然公園があり、総面積は約13万haで、県土面積の21%を占めています。
1 自然環境の保全対策
「自然環境保全法」及び「自然環境の保全及び緑化に関する条例」に基づき、優れた自然環境を持つ地域
や市街地周辺及び歴史的・文化的遺産と一体となった緑地を、自然(緑地)環境保全地域として41か所(国の指定1か所を含む。)、5,355haを指定し、その保全に努めています。
また、身近な自然として親しまれている平地林の保全対策、自然観察会や野鳥観察会などの自然とのふれあいの推進のほか、13年度からは「とちぎふるさと街道景観里親制度」を創設し、
4団体を里親に指定して、街道景観の形成を図るなど、様々な施策を行っています。
さらに、荒廃した足尾の山を復元するために、ボランティアによる植林のほか、植栽やヘリコプターによる実播等の治山事業を進めています。
2 自然公園の保護対策
自然公園の優れた風景地を保護するため、公園計画に基づく特別地域などの地域指定により、各種行為の規制を実施しています。
14年度は益子県立自然公園の公園計画を変更し、西明寺境内地及び高館山北斜面の地域指定を第一種特別地域に変更しました。
また、利用者に対する適正利用の指導を行うとともに、より快適な利用を確保するための歩道や園地等の施設整備を推進しています。
その他、奥日光地域では、日光市道1002号線における交通規制の代替交通手段として低公害バスを運行しています。
3 野生鳥獣の保護対策
野生鳥獣は自然環境を構成する重要な要素です。しかし、猛禽類など絶滅が危惧される鳥獣がある一方、シカやサル、イノシシなどのように農林業被害を引き起こしている鳥獣も
存在し、問題は複雑化しています。
県では、現在「第9次鳥獣保護事業計画」に基づき、鳥獣の保護繁殖のための鳥獣保護区等を設定しており、14年度末現在では32か所、199,598haになっています。このほかにも、野生鳥獣
による被害の防止や狩猟の適正化など、各種の鳥獣保護事業を総合的に実施しています。
4 環境緑化対策
県内の緑地(農用地を含む。)は県土の約80%を占め、全国的にみても緑に恵まれていますが、都市化の進展による緑の減少、森林の手入れ不足などといった問題を抱えています。
県では、地域の自然的特性を生かし、人と緑が調和した「山」「里」「街」の緑づくりを進め、@みどりを造り育てる、Aみどりを守る、Bみどりを学ぶ、を柱に、様々な緑化事業を行っています。
5 林野保護対策
樹木は、厳しい自然環境の中で長い期間にわたって生育するため、ひとたび松くい虫などの病虫害の被害を受けると、その回復は非常に困難になります。
14年度末現在における松くい虫の被害は、45市町村、約6,900haに及んでおり、県では、その被害を防ぐため、薬剤の航空散布や地上散布を計画的に行うとともに、「松くい虫防除県民運動」を推進して県民の
防除意識の高揚に努めています。 |